第4話 空き家だった一軒家のカフェ デイカー視点
いつものように隣国からナイト街を経由して仲間の待つカイヤ町へ向かっていた。
そこまでの道は一本しかなく、他に道はないが、途中の森が開けた辺鄙な場所に一軒家があった。
通りすがりに横目でその家を見ていたが、人が住んでいる気配はなかった。
しかし、今日通った時には人が住んでいる気配があった。
近くに行って見てみると“カフェガーベラ“と書かれた看板があり、ドアにはopenの看板がかかっていた。
(ここはカフェになったのか。ナイト街からカイヤ町までに休憩できるような場所があると助かると思っていたからちょうどよかった。ちょっと寄ってみるか)
俺はopenの看板のかかったドアを開けた。
「「いらっしゃいませ」」
中から複数の女性の声が聞こえ、すぐに一人、俺のところまでやってきた。
「お一人ですね! 良ければカウンターにお座りになりませんか?」
オレンジ髪の女性が言った。
「場所はどこでも構わない。食事もできるのだろうか?」
「はい、日替わりランチのみとなりますが、お食事ができます」
「良かった。それでいい」
腹が減っていたし、魔道具の靴を履いているとはいえ、カイヤ町まではしばらくかかるので食事ができるのはありがたかった。
「ありがとうございます。ではカウンターへどうぞ」
案内され、俺はカウンターにいた黒髪の女性の前に座った。
目の前の女性に気になっていたことを聞いてみた。
「……ここは以前から営業していたのだろうか?」
「いえ、今日からオープンしました。あなたが最初のお客様なんです」
「やっぱりそうか。この横の道はよく通るが、ここは昨日まではやっていなかった」
「はい、昨日までは空き家でした」
俺が気になっていた通りだった。
「ところで、日替わりランチとやらは何が出てくるんだ?」
「今日は和風スパゲティと味噌スープを提供させていただきます。少々お待ちくださいね」
カウンターの黒髪の女性が調理をするようだ。オレンジ髪の女性かと思ったが……。
「和風スパゲティと味噌スープ……スパゲティとスープは知っているが、和風と味噌は聞いたこともない名前だ」
和風や味噌というのは初めて聞いた。
「私も知らなくて、昨日初めて食べたんですけど、とても美味しいですよ!」
入り口で案内してくれたオレンジ髪の女性が興奮気味に教えてくれた。そんなに美味しいものならとても楽しみだ。
少し待っていると和風とやらのスパゲティと茶色のスープをオレンジ髪の女性が運んできた。
「お待たせしました。どうぞ」
「ありがとう。見た目は俺が知っているスパゲティと変わらないんだな。こっちの茶色いスープが味噌スープか?」
茶色いスープは初めてだったが、和風とやらのスパゲティは以前から知っているものと大差はないようだった。
「はい、そうです。それが味噌スープです。ぜひお試しください」
カウンターの黒髪の女性が答える。
「そうなんだな。両方とも初めてのもので楽しみだ。いただくとするか」
俺はまず和風スパゲティを口に入れた。
モグモグモグ
「……スパゲティはどれもコッテリしたものだと思っていたが、このスパゲティはあっさりしていて、とても食べやすくて美味しいな」
実は、今まで食べてきたスパゲティがコッテリしていたので、元々好きではなかったのだが、これはあっさりして食べやすく、美味しかった。
そして味噌汁もスプーンで掬って口にする。
ゴクッ
「!! ……今まで味わったことのない味だが、塩気だけじゃなくて、深みのある出汁が効いた味で、これは疲れた身体にとても染みるいい味だ。とても美味しい。俺はこれが気に入った」
俺は驚いた。初めての味だったが、今まで食べたことがないほど美味しいものだった。
見たところ、正直スパゲティと合うとは思えなかったのだが、実際に飲んでみると合っていてとても美味しかった。
俺は美味しくて夢中になってしまい、あっという間に完食した。
「どちらも食べたことがない初めての味だったが、とても美味しかった。会計をお願いしたい。いくらだろうか?」
「それはよかったです。今日はオープン記念で、普段の半額の400トピーになります。今後は他にも色々な料理を提供していこうと思ってますし、デザートも出す予定です。ぜひまた食べに来てください」
普段も800トピーでいいのはありがたい。大体店で食べると1000トピーはする。
「……本当にとても美味しかった。またお邪魔する。今度は仲間も連れてこよう。俺は冒険者でデイカーという」
思わず俺は名乗ってしまった。
「私はオーナーのエルと申します」
「私は従業員のシサです」
黒髪の女性はエル殿でオレンジ髪の女性はシサ殿というらしい。
「では、失礼する」
俺は店を後にして、カイヤ町へ向かった。
(本当に信じられないくらい美味しかった。あんな美味しいものがこの世に存在したなんて……)
俺はカイヤ町へ向かいながらさっき食べた和風スパゲティと味噌スープを思い出していた。特に味噌スープは見た目に反してとても美味しいものだった。
(他にも色々な料理を提供していくって言っていたから、あんな美味しいものが他にも出てくるんだろうな)
あの和風スパゲティと味噌スープというものを初めて食べて、俺はたちまち虜になってしまった。
(通り道にあるからまたすぐに食べに行けるな。楽しみができた)
カイヤ町に着いたら宿屋へ向かう。宿屋で先に仲間が宿を取っていた。しばらくはこのカイヤ町の宿屋を拠点にして、森へ魔物の討伐に向かうことにしていた。
宿屋は町の中心にあった。昼頃には宿屋に着く予定だったが、カフェで食事をしていたので予定より随分遅くなってしまった。
宿屋に着くと、受付の前のソファで見なれた顔が三人並んで座っていた。
「デイカー! 遅かったじゃないか!待ちくたびれたぞ」
最初に声をかけてきたのはフェオ、筋骨隆々で金髪の真面目な剣士だ。フェオは隣国の元貴族で元々趣味でやってた冒険者を本職にしたようだった。
「そうら〜、コロン達ずっと待っていたら、どこかに寄り道でもしてたら?」
独特な喋り方をするピンクの髪のおかっぱ頭の小柄でタレ目の少年、コロン。魔法使い。
コロンは平民出身のようだったが詳しくはわからない。
「君が全然来ないから、僕は女性に捕まって大変だったんだよ」
回復師でどこへ行っても女性から声をかけられる優男のクード。
クードも隣国の貴族の次男で、銀髪ではっきりした顔の華やかな見た目なので、どこに行っても女性にモテた。
この三人の冒険者達と俺はパーティを組んでいた。俺たちがS級になったのはつい最近だった。
ちなみに俺も剣士だが、本業は魔道具師だった。魔道具を駆使して魔物を倒している。
「遅くなってしまってすまない。ちょっと腹ごしらえをしていた」
「腹ごしらえ? この町の中で? それだったら先に僕達と合流してからでも良かったんじゃないか? おかげで僕は女性に付き纏われてしまったよ」
クードはいつものことだった。
「いや、この町の中じゃない。別の場所だ」
「別の場所ら? そんなとこ、どこにあったら?」
そうだろうな。昨日までは空き家だったらしいからな。
「ナイト街とこのカイヤ町との間に一軒家があった。そこだ」
「一軒家? 民家に上がり込んで食べさせてもらったのか?」
お堅いフェオは心配気味に俺に尋ねた。
「そうじゃない。そこはカフェをやっていたからお邪魔したんだが、そこで食べた和風スパゲティと味噌スープというものが、今まで食べたことがないもので信じられないくらい美味しいかった」
「そんな美味しいものなら俺も食べてみたいな!」
「コロンもら!」
「僕も興味あるなぁ」
「今度仲間を連れて来るって言っておいたからみんなで一緒に行こう」
次はみんなで寄ってみることにした。
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