モブキャラに転生したはずなのに

橘樹

第1話 プロローグ

 僕、蒼井晃あおいこうはゲームが好きな普通の高校生だ。特にファンタジー系のRPGが大好物で、日々勇者として、あるいは選ばれし者として世界を救ってきた。

 そんな僕は最近『ルミナスファンタジー』という、タイトルだけでも予想できる剣と魔法の世界を舞台としたRPGを発見し、さっそくプレイすることにした。土日と学校の宿題を犠牲にして日をまたぐ頃、ようやくクリアし、エンドロールの後次回作へと繋がる短いムービーを観た。


「いやぁ〜おもしろかった…続編も楽しみだなぁ」


 物語は王道、ざっくりと言えば田舎の村で育った主人公ルークが特別な力を得て成長し、多くの仲間と出会い、共に苦難に立ち向かうというものだ。

マルチエンドが採用されていて、選択肢や行動によってはバッドエンドを迎えることもある。バトルのチュートリアルで間違って【逃げる】を選択してしまった時は、つい驚いて声を荒げてしまった。

 村が滅び、1人生き残ってしまった主人公が罪悪感に苛まれながら生きていくという絶望エンドをゲームの開始早々に見せつけられたのだからしかたない。


 魅力的なヒロインも多く、特定のキャラと恋仲になれるなど、所謂ギャルゲーの様な要素もあり、スチル回収などコンプリートまでかなり時間がかかりそうだ。

 

「……あぁそうか、三連休…月曜は祝日だったよな…」

 

 長時間ゲームをしていたことによる目の疲れや頭痛、眠気は気にせず二周目に入ろうかという時、ふとあることが気になった。このゲームはメインストーリーの進行とは別に、サブクエストなどの特定のイベントを消化したりレベルなどの条件を満たさなければ仲間にならないキャラが多数いる。その中に唯一、全く育成せずレベルが低いままのキャラがいた。

 理由は明白で、ファンタジー世界の中ではあまりにも平凡で僕のような黒髪黒目の容姿、ストーリー中の活躍もなく、深掘りもされなかったため、ほとんど印象に残らずモブにしか見えなかった。だからヒロインなどの推しを優先し育成していた。

 

 気になったのは、次回予告のムービーにこのキャラ、ノクト・ウェイカーが登場していたことだ。


「…あれ?よく見ると…主人公の顔に似ているような?瞳の色や髪型、表情が違うだけ…これは、まさか血縁者とか、因縁の相手だったりするのかな?」


 いや、同じイラストレーターが描いた立ち絵だし、これだけキャラが多いと顔が似ていることもあるか…と納得し、さっそくタイトル画面からニューゲームしようとした時。


「ん?……『Another story』ってなんだ?」


 知らないコマンドが不定期間隔でチカチカと点滅していた。


「……なんだろこれ……クリア特典とか?…」


 制作会社のSNSや公式サイトなど、色々と探してみたけど『Another story』に関する情報はどこにもなかった。

 

「没データが残ってるのかなぁ…」


 バグだろうとは思ったけれど、本来なら知り得ない裏設定の様なものがわかるかも…と安易な気持ちでそのコマンドを選択した。


「ん?」

 

 その時、突如としてゲーム画面から身体中を覆い尽くすほどの閃光が放たれる。思わず目を閉じ身構えていると、徐々に意識が朦朧として全身の感覚がなくなっていった。


 直前に見えたゲーム画面のテキストがいやに目に焼き付いている。



『ご健闘をお祈りします』







 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る