駅に着く寸前、ガタンと大きく車内が揺れた。
「わっ、」
壁際だから後ろに倒れることはない。
だけど思い切りバランスを崩して横に倒れそうになる。
「危なっかしいなぁ、ミナは」
そう言ったシュウ君は、空いたほうの手でミナの腰を引き寄せた。
その勢いで、いつの間にかしっかりと筋肉がついた胸元に顔が埋まる。
今度はわかりやすく、先程のお姉さんが『やだ〜』と声を上げたのがわかった。
「また痩せた?腰、随分細いぞ」
それを確かめるように長い指がミナの腰を這う。
思わず出そうになった声を、寸前で堪えた。
「そんなことないよ。普通だよ」
嘘だよ。シュウ君と一緒に帰れなくなってから、少しだけ痩せちゃった。でもそれを言うとシュウ君は悲しむだろうから、秘密にしてあげる。
「ミナ、」
「お前ら、朝から暑苦しいな」
シュウ君が何かを言おうとした瞬間、
まるでそれを遮るように掛けられた声。
ちょうど駅に着いた。
どうやら同じ車両にいたらしい瀬戸君が、まるで化け物をみるような嫌な顔でこちらに向かってきた。
わざわざ混んでいる車内。人を掻き分けてまで言うことでもないよ。
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