第22話
「ダンジョン探索ですわ~」
翌日。黒風と赤焔の翼一行は凍てつく王廟の第十三層に来ていた。
いきなりボスに突撃して連携などでごちゃつくのではなく、きちんと連携の確認をしようという事で来ている。
第十一層からは神殿状の広間が続くエリアだ。
出現するモンスターは殆どが亡霊、非実体のアストラル体のアンデッドである。
一応一種類だけ
亡霊などの非実体のアンデッドは厄介だ。魔法効果の付いてない武器以外の攻撃を完全に無効化し、精神に干渉してくる事もある。
ただ
普通の範囲攻撃の魔法で死ぬし。
神殿上の広間であり八人居ても広さは充分。一行は出現したアンデッド小隊と戦っていた。
レベルは二十。
今いるのは
前衛としてメアリーとカレン、レイが突っ込む。
それぞれ一撃でモンスターを倒してドロップアイテムに変える。
攻撃している隙をついて
だが攻撃が通る事はない。メラニが大剣ラーヴァスパインを振るい敵を一刀の元斬り捨てる。
「
遠くにいる敵に向かってセレナが範囲攻撃の魔法を放つ。
放たれたのは竜巻だ。三メートル程の小さな竜巻だ。
竜巻は速く後ろにいる
亡霊たちは竜巻に巻き込まれ大ダメージを受ける。
一属性に特化する事でその属性の威力を上げたり特殊な魔法を習得したりすることが出来る職業だ。
その分デメリットもあり他の属性の魔法の威力が下がったり使用に通常より多くの魔力を消費したり、最悪はそもそも唱えられなくなる事もある。
だがその分威力の上昇率は高い。上位の者は属性に対し完全耐性や無効化能力を持つ者にさえ突破しダメージを与える事が出来るのだ。
セレナはまだその域には至ってないがそれでも充分強い。レベルだけで言えばセレナも白銀級相応はあるだろう。
真祖の吸血鬼アトラシアの子というのは伊達ではない。
「このまま行きますわ~!」
一行はダンジョンを進む。その姿は見てて楽しそうな物があった。
■
「お昼休憩でしてよ~」
メアリーが持つ
全員疲労無効の装備を持っているので疲労はしないが、精神の休息は必須だろう。
といっても精神的疲労も魔法で回復できる程度の事だが、人間らしさを維持するには必須であるとメアリーやカレンたちは考えている。
いざという時は
セーフエリアの作りも左程変わらない。神殿の中の作りだ。
メアリーがブルーシートを広げ床に座る。
メアリーは
見た目は色々とあるがメアリーは肩掛けのバッグの物を購入している。
「わぁ、美味しそう!」
出されたのはサンドウィッチやカツサンドなどのサンドウィッチ系の食べ物だ。
箱に入っており箱には
「私の手作りですわ~!」
「手作り?! 凄いね!」
「といっても料理人のクラスは持ってないから特殊効果はありませんわ~」
この世界では料理人も鍛えると食材を調理する事で特殊な効果を持たせることが出来る。
魔法攻撃力や物理攻撃力を上げたり、特定の属性や毒に耐性を得たり。後は単純に料理の味を上げたり。
また料理以外にも絵師等も特殊な効果を持つ絵を作ったりも出来る。
だいたいの職業には専用のクラス
魔王城の料理長もレベルがあり四十六レベルの料理人だ。オークなので人ではないが。
全員に料理が行き渡る。
「では、いただきます!」
全員いただきますと復唱する。
頂きますという言葉も三百年前の賢王が齎した概念でありこの国と聖王国では一般的に使われている。バルグラート帝国ではあまり馴染みが無いが。
「美味し~」
カレンが美味しいとミックスサンドをほおばる。
「腕前だけなら自信がありましてよ~」
その後も一行は食事を楽しんだ。
■
それから三日が過ぎた。
ダンジョン内の探索もシーカー役のデヴォンとティアラが居れば問題なく進むし、ブルガルムのレアドロップである地図を元にすれば迷う事はない。
一行のレベルもレイとエルミナ以外またも上がり、一行はダンジョン探索を楽しむ余裕すらあった。
レベルというのは個々人で上がりやすさが違う。
ある者にとってはゴブリン一匹殺すだけでレベルが上がる者が居ればゴブリン五匹殺してようやくレベルが上がる者もいる。
更にはレベル上限も個々人で違う。レベル十が限界の者もいればレベル五が限界の者もいるし、レイのように百レベルが限界の者もいる。
それを考えれば赤焔の翼と黒風一行はレベルについては恵まれていると言えるだろう。全員才能があるのだから。
そして一行は第十五層のボス部屋前に居た。
ボスの部屋の扉には女神を象っているのだろう彫刻が掘られている。
「まずは私とエルミナで出来得る限りバフをかけるわ」
カレンがそう言い魔法発動の準備に入る。
セレナは遠距離攻撃の為に今回バフをすることはない。カレンの魔力が尽きたら行うかもしれないが。
「よろしくお願いしますわ~」
メアリーも魔装を展開し準備万端と言った様子だ。
「
「
かけられたバフ魔法は単純なステータス増加から恐怖や毒等の状態異常に対する耐性の増加や攻撃に聖属性が乗る等と言ったバフだ。
バフ魔法の有無は戦局を大きく分ける。
「さぁ、行きますわよ!」
メアリーが扉を開け全員中に突撃する。
ボス部屋の作りは他の部屋と左程変わらない。
だが奥には玉座があり玉座には亡霊が一体座っている。
氷の鎧に身を包み、顔は揺らめく黒い炎。その手には黒い大剣を持っている。
この階層のボス氷霊騎士団長アークレイだ。尚名づけはメアリーである。
「開幕ブッパは正義でしてよ~!」
メアリーは奥に座るアークレイ向かって銃剣セイントブレードの最大チャージ砲撃を放つ。
追加で魔力を消費する事で極太の赤い光線と成りアークレイに襲い掛かる。
アークレイは立ち上がると同時に光線に体を包まれ大ダメージを受ける。
だが、メアリーのレベルは今は三十四。アークレイとレベル六の差がある為レベル差補正によってダメージは軽減される。
アークレイは左手を振るう。
呼び出されたのは黒くボロボロな鎧を身にまとい顔は青い炎に包まれたアンデッド小隊だ。
全員がレベル三十はある精鋭兵でありその数は三十体。
下手な都市なら攻め落としてもお釣りがくる戦力だ。何なら小国ならギリギリ滅ぼせるかもしれない。
「行きましてよ~!」
「突撃ぃ!」
カレンとメアリーが
そのままアークレイとの戦闘に入る。
残るメンツは三十体の小隊を相手だ。
「
セレナが範囲攻撃の竜巻魔法を放つ。
小隊にぶつかり小隊を削り吹き飛ばす。半数が飛んで行った
(<超衝撃波>プラス<重荷>プラス<
レイは幾つかの
<超衝撃波>は拳から衝撃波を放つ
同じ系統の
衝撃波と暴風が生じアンデッド小隊が吹き飛ばされる。
その大半がダメージによって消失していく。
「ははっ! 強いな!」
メラニがレイの強さに驚き声を上げ武器を構える。
小隊はこれで壊滅したがまだ終わりじゃない。
カレンとメアリーと戦闘中にアークレイが左手を振るう。
それだけで倒されたはずのアンデッド小隊が復活し再び襲い掛かる。
これこそがアークレイの面倒な
常に三十体のレベル三十のアンデッドが本体であるアークレイが倒されるまで常に出現し続けるのだ。
もし単に三十体のアンデッドとアークレイだけだったなら赤焔の翼単体で討伐できているだろう。セレナのレベルも五十以上はあるのだから。
だがこの常に出現し続けるというのが厄介な問題だった。
「面倒だな……」
レイは手ごろな亡霊に近づき腕を掴む。
そして亡霊を振り回し他の亡霊たちをぶん殴る。
人間武器、いや亡霊武器という奴だ。
「いくぜぇぇぇ!」
続いてメラニも大剣ラーヴァスパインを振るう。
<
これでメラニが斬り飛ばした相手は遠くへ吹き飛ぶ。
「
セレナは魔法を放つ。
緑色の風の刃が三つ生じ亡霊小隊に向かって飛んでいく。
この魔法は相手にあたっても効果が続く貫通という特殊効果を持つ。
それにより何体もの亡霊を斬り飛ばしても奥へ奥へと進んでいき壁にぶつかってようやく消滅した。
「さて……」
範囲攻撃はもう使えない。
レイが良く見れば隠密状態に入ったデヴォンとティアラが隠密状態で続々と敵を狩っている。
下手に範囲攻撃を放とうものならフレンドリーファイアとなってしまうのだ。
出現と同時に範囲攻撃ぶっぱし続けるのも無理があるので結局は地味に戦うしかないのである。
「さて、どうなるか──」
レベルでは勝っているが数の上では圧倒的にこちらが不利だ。
レイ以外はこのままでは数によって押しつぶされるだろう。
その為問題はいかに早く本体であるアークレイを倒せるかにかかっている。
いざとなれば自分が殿になり掃討すればいいか、とレイは敵陣へ突っ込んだ。
「せやぁぁぁあ!」
カレンは
勿論肉体強化の<肉体向上><肉体超向上>、<真・肉体向上>も付けておく。
<致命の斬撃>は使わない。アンデッドの持つ種族特性としてクリティカルダメージの無効化能力がある。<致命の斬撃>は確定でクリティカルダメージを与える
怒涛の連撃がアークレイを襲う。
アークレイは剣で防御するも大半の斬撃をその身に受けダメージを受ける。
「…………」
アークレイは一旦距離をとろうと<後退>の
だがその瞬間遠距離から魔弾が飛んできてアークレイに直撃する。
「距離は取らせなくてよ~!」
魔弾を放ったのは当然メアリーだ。メアリーの銃剣セイントブレードの魔弾である。
魔弾によってアークレイがふらつく。
その隙をついてカレンが斬りかかる。
だがアークレイは
カレンはガードは間に合ったが一手相手に譲ってしまう。
アークレイも同じ
<超斬撃>に<
怒涛の斬撃の攻めにカレンは<即応斬>と<鉄壁守>、<即応反射>で防御する。
ががが、と硬い金属同士がぶつかる硬質的な音が響き渡る。
剣でどうにかガード出来たがそれでも一部の斬撃は喰らってしまう。
致命傷には程遠いがそれでも微かなダメージだ。
「
そこでエルミナから回復魔法が飛んでくる。
「ありがとう!」
カレンは短く礼を言い戦いに戻る。
エルミナもついでに魔法を行使する。
「
呼び出したのは
両手に盾を持つ天使であり顔は何処か機械的であり全体的に青い姿をしている。背中には勿論天使の翼があり頭上には天使の輪がある。
レベル五十六のタンク役としての召喚である。
レベルだけならレイを除いた全員よりも高い
<挑発>の
だがアンデッドという神聖存在とは真逆の存在であるアークレイは衝動的に天使である
怒涛の攻めを見せる。幾つかの
その隙をついてカレンが横から斬りかかる。
<鬼断流>プラス<超斬撃>プラス<蒼閃・縦雲>だ。
勿論肉体強化の<肉体向上><肉体超向上>、<真・肉体向上>も発動済みだ。
趙火力によってアークレイに大ダメージが入る。
「このままいくよ!」
カレンは
相手のHP、体力を見る事が出来る魔法だ。
ただ対情報系魔法の
だがアークレイはそう言った装備や
「相手残り六割!」
カレンは見た情報を伝える為大声で叫ぶ。
これまでの攻防で四割も削れているのだ。
このままいけば勝てるだろう。
「──!」
だが、そうは問屋が卸さない。
ダンジョンボスにはギミックとしての特殊
ダンジョン内でしか機能しない、ダンジョンのボスだからこその機能だ。
「やべ発狂モードもう入った!」
発狂モード、正式名称<
この
ダンジョンボスに相応しい凶悪な能力である。これでアークレイは実質四十五レベルのモンスターと化した。
だが想定内だ。
バフを全力でかけて受けたカレンとメアリーならばこのレベルの相手でも同等以上に戦える。
カレンは幾つかの
互いに体を斬り合い削りあう。
カレンの体に傷が出来ていくが即座にエルミナから回復魔法が飛んできて回復される。
アークレイも傷を負うが亡霊タイプのアンデッドである為偽りの生命力、HPこそ減るが欠損等のバットステータスは着かない。アンデッドの特性とはかくも便利なものである。
「うおぉぉりゃぁぁぁ!」
カレンは雄たけびと共に切り刻んでいく。
自分もそこそこダメージを受けるが<不屈>と<痛覚無効>で痛みを感じない。
「カレンさん! 離れてくださいまし!」
そこにメアリーが叫びカレンは<後退>の
「レッドティア・イクスギア! フルバーストですわ!」
レッドティア・イクスギアの銃剣セイントブレードと六つの射撃ピットが赤く光り輝く。
レッドティア・イクスギアの特殊
使用者の魔力を消費する上二十四時間に一回しか使えない奥の手である。
だがその分火力は非常に高い。城壁程度なら軽く砕けるだけの力を持っている。
カレンは更に<超回避>の
レッドティア・イクスギアの六つのピットとセイントブレードからの射撃が重なり一つの光線、レーザーとなる。
赤く輝く閃光はアークレイを包み込み吹き飛ばす。
玉座までアークレイは飛ばされ衝突する。
光が収まった後、残ったのは砕けた玉座とボロボロになったアークレイだ。
鎧は砕け塵となり、剣は途中から折れてしまっている。
「残り体力僅か! 斬る!」
カレンは
「とどめぇぇぇ!」
<超斬撃>に<鬼断流>、<剛撃>に加え<蒼閃・縦雲>。
アークレイは防御する事も出来ずその身に受けた。
そして──アークレイはドロップアイテムを一つ落とした。
それによってアークレイが召喚した亡霊小隊も消えていく。術者が消えたことで召喚モンスターも消えるのだ。
基本術者が死ぬか気絶などをすると召喚モンスターは消える。
「やりましたわねカレンさん!」
「いぇい! やったわ!」
カレンとメアリーは武器を収めハイタッチして勝利を喜ぶ。
「私達もします?」
エルミナを守っていたレイはエルミナからそう提案されるも「この歳でハイタッチはまずいだろう」と断った。
他のメンバーはデヴォンとティアラだけハイタッチしていた。同じ隠密特化として何かシンパシーでも感じたのだろう。
「じゃあ早速第十六層へ!」
「行きましょう!」
ダンジョンは階層ボスを倒したからと言って第一層に直接その階層に行けるなどと言った新設仕様は無い。
その為ここで帰るともう一回アークレイと戦って階層を降りる必要がある。
なので階層を降りて下の階層を転移登録する必要があるのだ。
一行は玉座が消えて階段となった場所を下って行く。
「ここが第十六層ですわ~」
降りた先は広い場所だ。
ビギナーズダンジョンの草原にも似た雰囲気の場所だが冷気地帯である。
縦穴が幾つもあり竪穴には吊り橋がかかっている。この吊り橋を通って先へと進んでいくタイプのエリアだ。
「風つよっ!」
カレンは強い風を感じて思わず叫んだ。
一応冷気対策の
「これは……結構厄介ですわね」
この風の強さでは
勿論この風の強さも行動阻害に分類されるためカレンとレイは問題ないが他の者達は装備で対策出来ていないので行動に支障が出る。
第六環魔法に行動阻害に対する耐性を得る魔法がある為カレンが全員にかければ問題はないだろうが。
「取り合えずマーキングしてっと……これでよし」
カレンとセレナは転移魔法のマーキングをする。
第五環魔法の転移魔法では遠距離転移するには転移したい場所にマーキングをしておく必要がある。
これが上位の転移魔法なら記憶しておくだけで転移出来るが。
「それじゃ帰って勝利の宴をしましょ!」
カレンはそう笑い、転移魔法でダンジョン外まで帰った。
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