第5話 ジャンクロボットの山と、犬の犠牲

 部室の作業台に、

 分解された猫ロボットが並ぶ。


「先生、こっち側のIC、黒く焦げてません?」


「焦げちゅうけど、中身は生きとるかもしれん」


「いやその判断、根拠が薄い……!」


 航太の精密スキャンで、“動作制御チップの死亡”が確定した。


「動作制御系のICが、

 死んじゅう」


「なら……替えのチップ探すしかないな」


 桐生先生は、部室の隅で積み上がった段ボール山——

 通称 “ジャンクマウンテン” をがさがさ漁る。


「未来ちゃん、ロボットってのはね。

 捨てられた部品が宝物になることもあるんだよ」


「先生の人生観、ちょっと重いです」


「ほら見てみ、犬型ロボの運動制御IC! 世代近いき互換性あるはずや!」


 半分焦げた銀色のICチップを掲げてドヤ顔である。


「焦げてますってば!」


「愛があれば動く。ロボとはそういうものや」


「科学の話して!!」


 結局、その犬ロボット(合掌)からICを取り外し、

 航太の手で猫ロボへ丁寧に換装した。


「よし、ついた。これでどうや……!」


 電源オン。


 ——沈黙。


「…………動かん」


「やっぱり……」


「未来、ガッカリしすぎやろ」

「外山先輩、撮らないで!」

「失敗シーンは伸びるんや未来!」


 部室に、重たい沈黙が落ちた。

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