第31話「ドキッ!?告白大会!後編」

前回のあらすじ。

高本さん、永松に告る。

永松、告白にOKを出す。

永松&高本、晴れてカップルへ。

そして渡部が現れ、久遠さんを呼び出す。

久遠さん、覚悟を決めたような表情でステージへ向かう。


そして現在。

渡部と久遠さんが向かい合っている。

全く、誰が好き好んで好きな人が告られる様を見なければならんのだ。

さっさと終わってくれないかな。


「やっほー、日向くん」

死んだ魚のような目をしていたら、いつの間にか隣に見たことのあるギャルが座ってきていた。


「あなたは…渡部の隣にいるギャル子さん!」

「ねえ、ちゃんと名前で呼んでくれない?」

「ところで、ギャル子さんはいいんですか?」

「む、無視!?…いいって、何が?」

「いや、渡部が久遠さんに告るのとか、見ても平気なの?」

「まあ、進んで見たいものでは無いけどさ、結果はもうわかってるって言うか」

「もしかして、完璧に振られて落ち込んだ渡部を励ますついでに仲良くなろうっていう作戦でも企んでる?」

ってそれどこの日向湊斗だよ。

あまりにもブーメランすぎたわ。


「俺はその方法で久遠さんと仲良くなれたから効果あるぞ!」

「瞬哉はそんなんで私になびかないよ」

「男の趣味が悪いんだよなあ」

「余計なお世話だよっ!」

「いやマジに。渡部なんかに星野さんはもったいないって」

「…えっ?」

「渡部なんかじゃなくて、もっと良い人が絶対いるって。星野さんは渡部の女で収まる器じゃない」

「…え?何?日向君、私のこと口説いてる?」

「ごめん、星野さんはいい人だと思うけど、俺には好きな人がいるんだ…」

「なんか振られた!?」

「冗談はさておき」

「さておかないで!?」

「ごめん、ちょっとズケズケ言い過ぎたわ」

他人の色恋沙汰に口出しするなんて、ましてやその人の相手を貶すようなこと言うなんて俺らしくない…が、渡部みたいなやつにこの人はもったいないというのも本音だ。

別に、星野さんのことが気になるとかそういう訳ではないが、誰かと付き合うってのは不幸になるためにするものじゃなくて、その逆だと俺は思う。

星野さんが仮に渡部と付き合ったとして、星野さんはそれで幸せになれるのだろうか?

星野さんはめっちゃいい人だ。

男の趣味が最悪なだけで、めちゃくちゃいい人。

めちゃくちゃいい人だから、あんなカスみたいな男の彼女で人生を無駄にして欲しくない。


「あーあ、久遠ちゃんが羨ましいなー」

「え?なに急に?」

「私も日向君みたいな優しい人に好きになってもらいたいなー、って」

「ごめん、星野さんはいい人だと思うけど俺には好きな」

「告ってもないのに振るのやめてって言ってるでしょ!」

そっちが変なこと言うからだろ。

全く、反応に困るからやめて欲しい。

というか、渡部にそういう風に好きになってもらいたい、ではないんだな…。


「君は友達としてはアリだけど、恋人としては絶対ナシだから」

「そこまでハッキリ言われると傷つくんだけど」

「まあでも、日向君には久遠ちゃんがいるでしょ」

「まだ付き合ってないけどな」

「でも、二人ってほんとお似合いだと思うよ」

「そう言ってもらえて光栄っす」

「日向君は意外と人の心配とかよくしてるし、久遠ちゃんは日向君のそういうとこ、ちゃんと見てると思うよ。ほら、今だって」

え?今って?


「あ、あのー、久遠さん…?なにか、一言…」

なんか司会のお姉さんが困っている。

というかヤバい。

久遠さんがこちらをめちゃくちゃ見ている。

アレは…不機嫌な時の顔だ。

しまった、なにか誤解されたか?

後で説明しておこう。


「ねえ、久遠ちゃんなんか日向君のこと睨んでない?気のせい?」

「あの人、俺が他の女子と話してたら機嫌悪くなっちゃうんだよ」

「へー、もしかしてヤキモチかな?」

「い、陰キャの俺が女子と仲良くするなんて身の程を弁えろとかそういう思考なんじゃないの」

「またまた〜。分かってるくせに! ぶっちゃけ、日向君ってそこまで鈍感じゃないでしょ?」

「…はて」

「薄々、気づいてるんじゃないの?」

「多少は異性として意識してくれてるのかなって思わなくはないよ」

「分かってるんなら、なんで告らないの?」

「…ほっとけ」

星野さんにはニヤニヤされるし、久遠さんにはジトーっとした目で見られるし、渡部はなんかシラケた面してるけどアイツはいい。視界のお姉さんはなんかごめんなさい。


「…く、久遠さーん?」

「…ドンと来い」

「プッ、なんだそりゃ」

「…ふふ」

久遠さんがこっちを見て笑っている。

たまにこういう変なこと言うからこの子は面白いんだよなあ。はあ好き。

ところで、星野さんが尊いものでも見るかのような目線をこちらに向けているが、一体なんなのだろうか?

あんま話してると久遠さんがまた機嫌悪くなっちゃうし、今はそっとしておこう。


「さあ、それでは渡部さんによる告白、スタートです!!!!」

ワーパチパチパチー


「俺、葵ちゃんのことが好きなんだよ。初めて見た時からずっと。"アイツ"に告って泣いてたのを聞いた時からずっと!だからさ、俺と付き合ってよ」

意外にも、ストレートな告白だった。

どうしようもないクズ男ってイメージだったが、久遠さんのことは本当に好きだったのだろうか。

星野さんは少し驚いたような、悲しそうな顔をしている。

彼女ですら知らなかった、渡部の一面を俺は見たような気がした。


「…そう思ってくれるのは、嬉しく思う」

「だ、だったら」

「…でも、ごめんなさい。私は渡部くんとは付き合えない」

「…ど、どうして」

「…他に好きな人がいるから」

意外にも真剣な告白に対して、久遠さんも真剣に返していた。

そして、"好きな人がいるから"と振っていたのが気になった。

その場をやり過ごすための適当な嘘?

それとも、まだ斎藤のことを?

…あるいは、俺のことを?

いずれ、その答えは知りたいと思う。


「…もう、行ってもいいですか?」

「あ、ど、どうぞ…。 というわけで、渡部さんの告白は失敗となりました!ざんねん!ドンマイ! ではお次の方、どうぞー!」

久遠さんは呆然と立ち尽くしている渡部をチラチラ見つつ、そそくさとステージから降り、こちらへ戻ってきた。


ステージからとぼとぼと降りて来た渡部に周りの生徒が哀れみの目線を送っている。

渡部は何を思ったか、久遠さんの方へ近づいていた。


「…何?」

「…ば、バーカ!!お前みたいな女、こっちから願い下げだっての!!マジ萎えるわ!!」

プライドを傷つけられたのか、渡部が最後の悪あがきと言わんばかりに久遠さんに悪態をついた。


「え、えぇ…」

「うっせえ!うっせえ!!日向!お前のせいだろ!お前みたいなのがいるから俺が葵ちゃんと付き合えなかったんだよ!バーカ!バーカ!!」

「あまりにもガキっぽくて反応に困るんだが」

「うっせーー!!!!」

渡部はそのまま、校舎へ逃げていった。

一体、なんだったんだろうか。


「プライド傷つけられたのかなあ」

「…アレはない」

「元々好きじゃなかったけど、最後のアレはちょっとどうかと思うなあ」

俺と久遠さんは星野さんの方をちらちら見ている。

今の渡部の行動を星野さんはどう思っただろうか。

世話が焼ける、と渡部の後を追うだろうか?

それとも…


「あいつダサすぎでしょ、マジ冷めた」

あ、冷めちゃいましたか。


「2人とも、瞬哉が本当にごめん!今までのことも本当にごめん!!私もう瞬哉のこと切る!日向君の言う通り、もっとマシな男と付き合う!」

「がんばれよ!」

「…私がステージにいる間、どんな話してたの?」

「後で話すよ」

「それでね、久遠ちゃん…その…私と、友達になってくれないかな!?」

え、俺とは友達になってくれないの?と少し思ったが、空気を読んであえて口には出さなかった。


「…いいよ。いい人だから好き」

「ありがとう!久遠ちゃん!」

「…葵、でいいよ」

「わかった!葵ちゃん!私のことも明莉、でいいからね!」

「日向君も、仲良くしてよね!」

「お、おう…」

「じゃ、邪魔しちゃ悪いし私は行くね!二人とも、楽しんでね!」

星野さんは渡部のあまりのダサさについに渡部を捨てて、俺たちの友人になったらしい。

正直ホッとしている。


「…それで、日向くん」

「ん?」

「…星野さんとイチャついてたよね?」

「え?」

「…『私のこと口説いてる』とかなんとか」

「あ、いや違うよ」

「…説明して」

「いや、その…」

その後、俺は久遠さんに星野さんとの会話を全て説明し、疑いを晴らすことに成功するのだった。

しかし、機嫌が治ったわけではないので、食べ物を一緒に食べ回ることでご機嫌取りをするのだった。


食券を買いまくったので、俺の財布はスカスカになり、そして俺の文化祭は幕を閉じた。

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