第3話 エントロピー増大の法則

 

 【エントロピー増大の法則と、予期せぬバタフライ効果】

 

 本日、私は二つの出来事について共有したいと思います。

 

 まず、一つ目。作品『次は、桜』のコア人物ジェンセン(作中ではジェン先生)が、ドクター・ストレンジのような「予言者」として語った、人類が全面的な「デジタルヒューマン化」の過程で経験するであろう種々の事象についてです。

 

 どのルートを辿っても、結末は「混乱」しかない、と彼は予見しています。そして、たとえ彼の信念が「絶対的な善意」であったとしても、人類の貪欲な行動を変えることはできません。

 

 自虐的なほど、AIとの無数のサンドボックス推論を重ねた結果、未来を「予見」した。ジェンセンは「無為むい」を選択せざるを得ませんでした。

 

 一つには、彼が過度に干渉することで、他の変数を生み出し、「デジタルヒューマン化」が陰謀論いんぼうろんへと発展するのを恐れたためです。もう一つは、テクノロジー装置を即座に量産し、一夜にして供給と需要の問題を解決できるほどの強大な力を彼が持っていなかったためです。

 

 これは、物理学における「エントロピー増大の法則」に少し似ています。あなたが何かをしても、あるいは何もしなくても、結果はただただ、ますます混乱していくばかりなのです。

 

 

 さて、二つ目。予期せぬバタフライ効果についてです。これは物語の筋書きそのものとはあまり関係ありませんが、私個人の行動と企図に関わることです。


 私は客観的な視点で『次は、桜』の読書感想文を書いたつもりですが、根本的に避けることのできない動機は、この作品を宣伝したいということに尽きます。これは当然のことです。しかし、事態の発展は私の想定通りには進みませんでした。

 

 それどころか、全く予想外のことが起こりました。私の評論には多くの応援とフォローをいただきました。宣伝という観点からすれば、感謝してもしきれないほどだと、誰もが思うでしょう。

 

 しかし、実際のところは、原作品である『次は、桜』のほうは人気がほとんど増えず、原作者の「内情」によれば、増えたフォロワーはたった一人。そして、その一人が投稿するエピソードごとの応援とPVだけだということです。

 

 この状況は、YouTubeの生態系を彷彿ほうふつとさせます。観客の中には、実際に映画館へ足を運んだり、DVDを探して見たりするのではなく、評論やリアクション動画を見る方を好む人が増えてきました。これは、時代のトレンドとでも言うべきでしょうか。

 

 私と作者は、たった一人でも、真心を込めて読んでくださる読者すべてに深く感謝しています。ただ、このバタフライ効果が巻き起こした嵐は、私自身の方へ反転して吹きつけてきているのです。

 

 これは、まるで原作で描かれた「孤独」そのものです。私たちが注目や承認を求めれば求めるほど、物事は逆に進んでしまう。つまり、それは「マーフィーの法則」のようなものでしょうか。

 

 いずれにせよ、作者共々、忠実なフォロワーが一人増えたことを大変嬉しく思っています。このフォロワーは作者も私も両方をフォローし、応援してくださっています。ここに特別に感謝申し上げます。

 

 以上、大変恐縮ですが、今日のこの記事は評論ではなく、むしろ日記になってしまいました。

 

 次号では、原作における哲学、特に人類の「存在」について引き続き掘り下げていく予定です。先に予告しておくことで、もう逃げられなくなりました。ご期待ください!

 

 ***

 

 いつものように、マンマンはざっとチェックしただけで記事を公開し、慌ただしくメトロの最終列車へと急ぎました。

 

 普段と違っていたのは、今日、携帯にこの忠実なフォロワーの応援が、すぐに飛び込んでこなかったことです。

 

 随筆ずいひつはまず公開してしまい、後でチェックして修正するという悪癖あくへきがついてしまいました。これは、日中の編集作業における彼女の慎重さとはかけ離れています。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る