第8話 砂まみれのお嬢様
俺は美優さんを車の後部座席に寝かせると、
見つかりましたとスマホでメールを送り、急いで家へと戻った。
家に戻るとすでに玄関の前には絢斗さんが待機していた。
「すいません、戻りました!」
「.....遅いぞ、颯」
「すいません。なかなか言うこと聞かなくて.....あ......と、一発やってしまいました」
俺が拳を見せると、絢斗さんはやれやれと言った表情でため息を吐き、外から車の様子を伺った。
「.....まぁいい、美優さんは俺が預かる。お前は親父に報告してこい」
「わかりました」
俺は美優さんを絢斗さんに任せ、
親父に報告へと向かった。
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颯が立ち去ったのを見届けた後、
後部座席を開くと、そこには気を失ったままの美優さんが横たわっていた。
座席と制服、髪に付く砂を不思議に思いながらも俺はそのまま抱き上げ空き部屋のソファーベットに寝かせた。
「なんでこんなに砂まみれなんだ.....?」
髪の毛触れ、軽く砂を叩く。
そのまま視線を下半身に向ける。先ほど抱き上げた時に気になったものがあったのだ。
「それにこの傷.....ナイフか?」
俺はそばにあった木箱からガーゼと消毒液を取り出し、軽く含ませ太ももに当てた。
血はすでに固まっている様子で傷も浅傷、傷跡は残らなそうだ。
「.....これも颯がやったのか?あとで事情聴取だな」
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「んんっ.....」
私が目を開けるとその場所は海ではなく自宅にいた。痛みが走るお腹に触れれば、気を失う前に颯に殴られた事を思い出した。
「起きましたか?」
「!?.....絢斗」
急に声をかけられて振り向くと、
私の隣には絢斗が座っていた。
「体調は大丈夫ですか?」
そう問いかけられれば、
まだ砂が付いていたのだろうか、優しく頬に触れて指で軽くさする。
「だっ.....大丈夫だから」
急に恥ずかしくなり、慌てて顔を逸せば、絢斗は私の腕を掴む。
「美優さん、どうしたんですか?ちゃんとこっちを見て下さい」
「ううっ.....も.....う大丈夫だから、私部屋に戻るね」
私はいてもたってもいられず、絢斗の腕を振り切れば走って部屋を出て自分の部屋に入りそのままドアを背に崩れ落ちた。
「距離感近っ.....」
鳴り止まぬ心臓と顔が火照り続けていたが、すぐに正常へと戻る。
立ち上がれば椅子に座ると、机の引き出しから古いアルバムを取り出す。そこには一枚の家族写真が貼られていた。
私は幼い頃、絢斗が好きだった。
カッコよくて、優しくて、
いつも守ってくれて大好きだった。
本気で私は絢斗と将来結婚したいって思ってた。
でもある時、私は絢斗の気持ちを
読んでしまったのだ.....。
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