第10話 ねぇ笑って
その日、レオナルドがソフィーの部屋へと入ると、彼女は青白い顔でベッドに横になっていた。
レオナルドはギョッとしてベッドに駆け寄ると、瞼を閉じているソフィーの体を揺らす。
「……あら、リオ。いらっしゃい」
ゆっくりと目を開いて弱々しく微笑むソフィーに焦燥感を覚えたレオナルドは机の羊皮紙に羽ペンを走らせた。
ソフィーに新しく教えてもらった文字で懸命に書いたそれを彼女へと見せる。
"どうしたの? だいじょうぶ?"
「いやだわリオ、わたしは元気いっぱいよ」
無理矢理笑うソフィーをレオナルドは睨みつけた。
すると観念したのたか彼女はぽつりぽつりと語り始める。
「今日の研究でね、いつもより沢山血を採ったの。そうしたら何だかクラクラしちゃて……」
遠い目をしてぼんやりとしているソフィーの姿が痛々しくて、レオナルドは少女の頭をぎこちなく撫でる。
「励ましてくれているの? ありがとう、嬉しい」
ソフィーの顔に笑みが戻りレオナルドはホッとしたがそれも束の間、少女はくしゃりと顔を歪めるとポロポロと大粒の涙をこぼす。
「わたし、もっと大きな研究室のある遠い国へ行かなければならなくなっちゃった。あなたと別れて、この街を出て、ひとり遠くへ行くことになったの。そんなのいや、リオと別れたくないっ!! 一緒にいたい!!」
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