第5話 お転婆娘


 レオナルドが一通りの掃除を終えて暖炉から出てくると、直ぐそこに少女・ソフィーが立っていた。


「無視をしないでちょうだい! わたし、あなたとはもう友達だと思っているのよ? そりゃあ何度か窓越しに手を振り合っていただけよ? それはあなたにとって迷惑なことだったのかしら? ねぇどうなの? 何とか言いなさいよ!」


 ベラベラと早口で捲し立て、レオナルドの両肩を掴んでガクガクと揺らすソフィー。

 外から見ているとまるで深窓の令嬢然としていたが、実際のソフィーは勝ち気なお転婆娘の様だ。


「掃除は終わったかい? 早くしとくれよ!」


 ドンドンと冷たくて重たい扉が外から叩かれ、中年の女の苛立った声がする。

 ソフィーは眉間に皺を寄せると、きつい口調で言い放つ。


「おばさま、【あっちに行け】!」


 すると……。


「はい、分かりました」


 無機質な声で返事があり、本当に扉の前から気配が消えた。


「さぁ続きよ。わたしとあなたはもう友達なの! だから、【名前を教えなさい】!」


 ソフィーに詰められるレオナルドは困り顔で「うー」とか「あー」と意味のない言葉を繰り返す。

 少女はと思いつつ、その原因を察した。


「耳が聞こえないの?」

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