第12話 ​🏰 :夢の王国、血のスコアリング

 1. 法の悪用、ゲームの始動

​ 2040年1月15日。東京ディズニーランドは、最新のAIアトラクションと自動警備ドローンが多数導入されているにもかかわらず、来園者は絶えなかった。

​ 参加者は三人。里見、上杉、北条。彼らは、佐渡島体制下の日本で、**「人命保護法」**を最大限に悪用することに喜びを見出す、冷酷な若者たちだった。

​ 彼らの目的は、銃や刃物で**「カップル狩り」**を行い、**殺人に至らないギリギリの線で「何人負傷させるか」**を競う、恐るべきゲームだ。

 ルール:

​ ターゲット: 園内の「カップル」を狙う。

​ 武器: 骨折や重度の打撲に特化した非致死性の改造銃(ゴム弾・スタン弾)や、刃先が鈍らされた金属バットなど。

​ 勝利条件: AIによって負傷の度合いと人数がポイント化され、最も多く「非致死性の重傷」を与えた者が勝者となる。

​ ペナルティ: 殺人(人命の損壊)を犯した場合、直ちに治安維持ドローンによって射殺される。

 里見は改造銃を、上杉は鈍器を、北条はスタンナイフを隠し持ち、パークのエントランスをくぐった。彼らの顔は、絶望ではなく、**「法に守られた暴力」**という歪んだ興奮で歪んでいた。

 2. シンデレラ城前のアタック

 ​最初のターゲットは、シンデレラ城前の広場で記念撮影をしていた、若いカップルだった。

 ​北条が先陣を切った。彼は人目を避けてカップルの背後に回り込み、スタンナイフで男性のふくらはぎを深く、しかし生命に影響のない部位を切りつけた。

​「アアアッ!」

​ 男性の悲鳴が上がり、女性がパニックに陥る。

​ 里見は即座に反応した。彼は改造銃を女性の太もも目掛けて発射。**ズドン!**という鈍い音と共に、女性は悲鳴を上げながら倒れ込んだ。骨折までは至らないが、重度の打撲だ。

 3. ドローンによる監視と警告

​ 悲鳴とパニックが広がる中、パーク内に設置された治安維持ドローンが、彼らの上空に瞬時に集結した。しかし、ドローンは射殺プロトコルを発動しない。

​<警告:里見敦、上杉一郎、北条卯吉。あなたは現在、傷害罪および公衆の安寧を乱す罪を犯しています。人命損壊の危険は確認されません。速やかに武器を投棄し、AI裁判所へ出頭しなさい。さもなくば、『非致死的拘束兵器』を適用します。>

​ ドローンは、殺人を犯さない限り、彼らを「射殺」しないという法の制約に縛られている。

​「まだだ!まだ終わんねぇぞ!」

​ 上杉は、ドローンに監視されていることを承知の上で、広場にいた別の客に向かって鈍器を振り上げた。彼の目的は、ドローンが射殺プロトコルを発動できないギリギリのラインで、どれだけ暴力を振るえるかを試すことだった。

​ 里見、上杉、北条による、人命を奪うことのない、しかし最も醜悪な暴力のゲームは、夢の王国で始まったばかりだった。

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