もしも、この物語を読んでくれる人がいるなら、それがあなたでありますように。

クロダ沖

第0話「プロローグ」

 朝、目が覚める。



高校に入って、もう二週間が過ぎた。

あこがれだったブレザーにも、ネクタイの結び方にも、少し慣れてきた。



学校に行こうと自室を出ようとしたとき、

ベッドわきに落ちている一冊の本に気づいた。



(こんな本、持ってたっけ。)



あせた青色のカバーは、この部屋には少し似合わない。

何枚もの生成りの紙が挟まれ、分厚くなってしまった一冊を拾う。

アンティークの洋書のようだが、タイトルはどこにも書かれていなかった。


何気なく、挟まれたものが落ちないようにめくってみると、

意外なことに日本語で書かれていた。



手書きで、しかも印刷ではなく直筆の文字で。



どうせ、バス移動の時間は暇なのだ。

深く考えず、カバンに押し込む。



普段は小説なんて読まない。けれど、

なんとなく、この本だけは気になった。



バス停につく。

朝、ここから乗車するのはいつも俺一人しかいない。



バスが来たら、乗ってすぐの、右側手前の一人席に座る。

カバンから青い本を取り出す。



表紙を開くと、あらすじも筆者名もなく、

最初のページからこう始まっていた。



――今でもあの頃の冒険を夢に見る。



悲しいことや嫌なこともたくさんあったけど、

あなたがいたから前に進めた。



もう、私のことも思い出せないだろうけど。

これを読んでくれたのが、――あなたでありますように。

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