第2話:あいあい傘の落書き

波打ち際で波が届かないあたりで、アズサは座り込み貝を拾った。


何をするのかと思ったら、砂にハートを描き、 「アズとリク~♪」と歌いながら、あいあい傘を書いた。


「なんか、ハズイなー」


そう言って笑いながらリクを見上げる。 愛らしい、くりくりっとした大きな目で見上げられて、リクの心はふたたび撃ち抜かれた。


この海辺で今日は、いったい何度撃ち抜かれてしまうのだろう。


と、そこに大きな波が来て、あいあい傘を覆って消し去ってしまった。


「もーッ! せっかくアズが書いたのにー!」


ほおをぷくっと膨らませるアズサに、リクはまたもや撃ち抜かれてしまった。


「アズが可愛すぎて、息止まった!」


そう言うと、アズサは「アリガトー」と返事をした。




アズサが立ち上がると、砂浜に自分たちの影が長くくっきりと映った。


リクとアズサの影が重なって寄り添っているように見えて、


「影、くっついてるね」とアズサが言った。


「ドキッとした?」いたずらっぽい目でリクの目をのぞき込んでくる。


「別に」とリクは言ったが、動揺しているのが顔に出ていたので、


「リク、嘘つくの下手ー」と笑われた。


コロコロと笑うアズサの笑い声に、思わずかわいいと思ってしまったので、 リクの完敗だった――。

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