ツンデレ妹と甘々姉に挟まれて、今日も平穏じゃありません!

@hight-gamer

第1話/朝から修羅場って、どんな青春だよ

 俺の名前は荒川あらかわほまれ

 県立桜ノ丘さくらのおか高校の二年、陸上部所属。

 特に速くもなく、特にモテるわけでもない、ただの凡人。


 なのに最近、やたらと視線を感じる。

 廊下を歩けば、「あれ、あいつ花村姉妹と登校してる奴だよな」なんて囁かれる。

 羨ましい? いや、本人としてはそんな余裕ないんだって。マジで。


 理由は単純。俺の幼馴染が、学校一有名な双子美少女だからだ。

 姉の花村はなむらミア、妹の花村はなむらイル。

 家も隣、幼稚園からの付き合い。

 ……でも、長年の付き合いにもかかわらず、二人の間での立ち位置は極端だ。


 姉とは仲良し。妹とは犬猿。

 つまり、バランスが最悪なわけで──。


「誉くーん、待ってぇ〜!」


 朝の通学路に、いつもの甘ったるい声が響く。

 振り返ると、陽の光を浴びたミアが駆けてくる。

 制服のスカートがひらりと揺れて、柔らかい笑みがこっちに向かってくる。

 あの瞬間、世界の彩度が上がる気がする。……いや、気のせいだよな?


「おはよう、ミア。今日も元気だな」

「えへへ、誉くんが待っててくれたから〜。ありがと♪」


 そう言って、俺の腕に自然に絡んでくる。

 ちょ、近い。いや、近すぎる。

 しかも、柔らかい。すごく。


「お、おいミア、離れろって! みんな見てる!」

「え〜、別にいいじゃん。子どもの頃から一緒に登校してたんだから」

「昔はそんな……その……当たるもの、なかっただろ!」

「……? 何が?」

「なんでもねぇっ!」


 ミアは小首をかしげて、にこっと笑う。

 無自覚天然最強ヒロイン。恐るべし。

 これ、毎朝だからな? そりゃ視線も集まるって。


「はぁ……また始まった」


 背後から冷えた声が落ちてきた。

 イルだ。


 姉と瓜二つの顔立ちなのに、空気が真逆。

 ストレートな黒髪に、淡い唇。

 同じ制服なのに、なぜこうも印象が違うんだろう。


「おはよ、イル。今日も元気……そうだな?」

「別に。ていうかさ、朝から腕絡めて歩くとか、見てるほうが恥ずかしいんだけど」

「え、だって誉くんが嫌がらないから〜」

「嫌がってるでしょ。顔真っ赤じゃん」

「こ、これは日差しのせいだって!」


 ミアがクスクス笑って、イルがため息をつく。

 このパターン、もう何百回目だろう。


 だけど最近のイル、なんか反応が棘っぽい。

 前はもうちょっと会話してくれた気がするのに。

 視線が合うとすぐ逸らされるし、距離も取られる。


(……やっぱ嫌われてんのかな、俺)


 いや、理由は分かってる。

 俺とミアが仲良くしてるの、面白くないんだろう。

 昔から三人で一緒に遊んでたのに、いつの間にかになってたから。


「誉くん、今日は部活あるの?」

「ああ、放課後にちょっと走り込み」

「えらいね〜。じゃあ私、おにぎり作ってあげようか?」

「えっ、いいのか?!」

「もっちろん! 誉くんの好きなツナマヨ♪」

「お、おう……助かる……」


 なんだこの新婚ムード。

 登校中だぞ? 人いるぞ? 目立ちすぎだって!


「……朝からラブラブかよ。ほんっと、見てるだけで胃がもたれる」

「おいイル、言いすぎだろ……」

「別に。事実を言っただけ。ねぇ、お姉ちゃん、少しは恥ってもんを──」

「えっ? イルも誉くんと腕組みたいの?」

「はぁっ!? な、なんでそうなるのよっ!」

「ほら〜顔赤いし〜♪」

「ち、違うってば!!」


 イルの声が一段高くなって、道端のスズメが飛び立つ。

 ミアが楽しそうに笑って、俺はただ頭をかくしかなかった。


(……これが、俺の毎朝か。羨ましいなんて言う奴、代わってみろよ)


 ツンデレと天然に挟まれて、心臓のライフはもうゼロだ。

 でも……どこか、悪くないと思ってる自分がいるのも確かで。


 そんな自覚が芽生えた瞬間、イルと目が合った。

 彼女は一瞬だけ視線を泳がせて、ふいっと前を向く。

 耳の先まで、ほんのり赤かった。


(……え、今の、気のせい……だよな?)


 朝の光が三人の影を並べて、長く伸ばしていく。

 俺の青春は、どうやらもう少し波乱が続きそうだ。

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