第21話説教
俺が家に帰るとすぐに姉貴に捕まった。
夕方よりも少し早いので昼寝でもしているかと思っていたが、しっかり待ち構えていた。
姉貴のこういう時だけしっかりしているのは、ウザい。
でもそれを口にするつもりはない。それを言ってしまうと拘束時間が長くなってしまうからだ。
「ちょっと凌平帰って来るのが早い」
姉貴は俺を見るなり言ってきた。
まあこれは言われる覚悟をして帰って来た。
なにも言われないことが理想だが、流石にあの状況では集中出来ないし、俺の心がもたない。
だから今日は素直に姉貴の小言を受け入れる。
「あんた、私の部屋に来なさい」
それは予想していなかった。
これはもしや2時間コースかもしれない。
小言を受け入れる覚悟はしていたが、流石にここまでとは思っていなかった。
夏なのに俺の腕には鳥肌が立ち、冷や汗が出た。
俺は姉貴に逆らう言葉が思いつかずに部屋に連行された。
「で、なにもせずに帰って来たと」
なにもせずにとは心外だ。
俺はしっかりと宿題をして来た。それなになにもせずにだと。
まあ姉貴のなにもせずにとは、遊んだりしなかったのかと言う意味であろう。
姉貴は俺が帰って来た時からずっと機嫌が悪い。
まあその理由は俺が早く帰って来たことだろうが、話して行くうちに余計機嫌が悪くなっていった。
余計に機嫌が悪くなるのは、俺は悪くないだろう。
だって俺はあくまでも、千佳と一緒に宿題をしに行っただけなのだから。
だから遊ばなかったとしても普通のことなのだ。
でもこれも逆らう言葉には出来ない。
筋は通っていても姉というのは関係なく怒って来るのだ。
だから言ってしまうと火に油を注ぐだけなのだ。
俺はこれから姉貴の言葉を肯定し続けるロボットになる。
でもこれにも注意が必要だ、気を抜いてテキトーに答えると逆にキレられる。
だからこれからの1時間45分の間は、集中して返事をしなければならない地獄の時間だ。
だがこの時間が短くなる起死回生の一手を俺は持っている。
「あの1ついいですか?」
「なんだね」
俺の弱々しい声に姉貴が冷たく返す。
「明日も一緒に宿題する約束をして来ました」
姉貴はそれを聞くと、ベットから床に正座していた俺を見下す形から俺の目の前まで降りて来た。
やはり奥の手は取っておくべきだ。なぜなら姉貴に今の報告はクリーンヒットしたらしい。
「それならこれからの話しを30分にしよう」
結局30分はあるらしいが、時間は縮まったので良しとすべきだろう。
俺は嬉しいのかめんどくさいのか分からなくなってきた。
だが元より良いことは確実であるので、喜ぶ事にしよう。
「じゃあまずは、千佳ちゃんがいつもより距離が近い事に気づいたのに、なんで自分もってならない訳?」
そんなこと言われても俺恥ずかしかったから仕方がないだろう。
これはもちろん言えない。キレられはしないだろうが、イジられるのが確定する。
だから他の言い訳を考えないといけない。
だがこれは他の答え方なんかあるのだろうか。
だから俺は黙っているしかなかった。
それを姉貴が許すはずもなく、ベットに戻ってしまった。
「仕方ないから明日、一緒に遊ぶ約束して来るなら今日はもう許してやるよ」
姉貴が俺を見逃すだと?!
もしかして今の最適解だったのか?
「因みに今私の質問に答えなかったのは良くないから」
俺は姉貴が怖い。
明日もこの時間があると思うと憂鬱になる。
俺は姉貴から解放された後、部屋に戻って千佳にメッセージを送った。
メッセージの内容は、明日宿題をする場所についてだ。
俺は流石に明日も千佳の家となると、また集中出来ないのでなるべく避けなければならない。
それを意識して千佳に返信しなければならない。
『ごめん、明日はうちは無理かも』
なんと千佳の方から家は無理と返信が来たのだ。
喜び辛くはあるが、一応喜んでおこう。
『だから近くの図書館でしない?』
確かにそれはすごくありだ。だから俺は了承する返事をした。
俺は明日が楽しみになって来た。
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