第16話親友と新しいお姉ちゃん
私が落ちついたのを確認すると小春さんは離れてしまった。
もっとこの人に抱きついていたかった。でもそれは出来ない。
私には話さなくてはいけないことがあるのだから。
「二人に相談したいことがあるんです」
「もちろん聞くよ」
二人は私の言葉を聞くと、とても笑顔になった。
そして私が話し出すと真剣な顔になった。
かわいいと言われても今までは何も感じなかったのに、凌平に言われた時だけ嬉しかったこと。その時に生まれた2つの感情。胸を締め付ける痛み。これらについて二人に相談した。
二人は私が話している間、黙って頷きながら聞いてくれた。
私が言葉に詰まった時は何も言わずに待ってくれて話しやすかった。
私が話し終わると陽菜は考えるそぶりをしていた。
小春さんはすぐに口を開いた。
「1つずついこう。まずは凌平にかわいいと言われて嬉しいかった事だけど、それは千佳ちゃんの中で凌平が特別な存在って事なんじゃないかな」
特別な存在?
確かに言われてみればそうなのかもしれない。
初めて話した時に呼び捨てにしたけど、彼以外を呼び捨てにはしていない。
出会った時から彼は、私の中で特別だった。
特別な友達であり、私の先生でもある人。
今思い出してみれば私は彼に対して、初対面の人にする接し方ではなかった。
私は彼と話をする前から、彼は私の中で特別だったのかもしれない。
なぜ彼が特別なのかは分からない。
でもいつか必ず分かるはずだ。
分からないといけない。そう思う。
私の中で一つの悩みの答えへの道筋が見えた。
「確かにそうなのかもしれません」
私にとって彼は特別な存在であるのは分かったが、その理由までは分からないので曖昧に答える。
特別な理由が分かった時、曖昧な返答はハッキリしたものに変わるだろう。
「一旦1つ目は解決かな?じゃあもう1つは陽菜ちゃんよろしくね」
「私ですか?!」
「当たり前でしょ?千佳ちゃんは私達二人に相談してるから、次はよろしく」
小春さんはそう言って親指を立てて全てを陽菜に任せた様だ。
でも私の中で引っかかった事があった。
それは私の相談事はあと2つあるのに小春さんが「もう1つは」と言ったのだ。
私はそれが気になってすぐに二人に聞いた。
「いや、千佳の相談はあと1つだよ」
相談している者が言うことかは分からないが、二人は私の話を聞いていなかったのか?
二人に限ってそんな事はないだろう。
陽菜達は私の話をあんなにも真剣に聞いてくれていた。
だから二人には私が思いもしない答えがあるのかもしれない。
「難しい顔しないで千佳。問題は簡単だよ。千佳が2つの感情と思っているものは、本当は1つの感情でその感情が原因で胸が苦しくなっているんだよ」
私には理解出来ないところがあった。
それは2つの感情が本当は1つの感情であると言う事だ。
でも良く思い出してみれば、その2つの感情は凌平に褒められた時に同時に来た。
だからと言って私には、その2つが同じ感情だとは思いもしなかった。
でも陽菜と小春さんは確信していた。二人の顔と態度を見れば分かる。
だから私は陽菜に続きを話してもらうことにした。
だが陽菜はこの先は私には分からないと言う。
これについても小春さんも同意していた。
「千佳ちゃんここから先の答えは、自分でこれからゆっくり見つけて行こ」
そうだ、私はまだ二人に話していない事がある。
私は今のままだと凌平とまともに話せない事だ。
それを二人に話すと謝られてしまった。
「千佳それは私達にはどうすることもできないと思う」
「1つ言える事は慣れるしかない、かな?」
二人は優しい。答えがないでも、ないなりに答えてくれる。
だから私も二人を信じて慣れるまで頑張ろう。
その相談が終わるといい時間だったので寝る事にしたのだ。
今日は本当に楽しかった。
そして私は親友の他に信頼できるお姉ちゃんを見つけた。
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