第14話夜食はカップラーメンにつきる
俺達は近くのコンビニに行く為に家を出た。
外はすでに夏の夜だ。雨は降っていないのにジメジメするし暑い。
だから俺達の格好は袖が短い物が多い。
だが千佳と那須野さんは、姉貴の服を借りているので少しだけ大きいようだ。
これが冬なら萌え袖になっていたのだろう。惜しい。
しかし今のままでも、彼シャツみたいでいい。
「かわいい小林さん見て顔が緩んでるぞ」
秀人が俺に耳打ちしてきた。
俺はそれを聞き緩んでいた自覚をし、引き締める。
男の緩んでいる顔は流石に情けないだろう。
ていうか秀人はあの二人を見て何も感じないのか?
俺は千佳を見てかわいいと思うし、姉貴もそう言っていた。(千佳だけでなく那須野さんにも)
それなのに秀人は、俺と変わらない様に二人に接している。こいつには心がないのか?
「凌平なんか失礼なこと考えてないか?」
「そんなわけないだろ」
なんだこいつ、鋭すぎるだろ。
俺はこの時秀人に恐怖をおぼえた。
俺の家から一番近くのコンビニは、歩きで10分程だ。
夜の散歩にはちょうどいい距離だ。
コンビニに向かう間は、さっきまで部屋で何をしていたのか、とかこれから何をするのか、とかを話していた。
話の流れで家に帰ったら、俺の部屋でお菓子パーティをする事になった。
今から行くコンビニでその時食べる物を買うという。
もちろんこのお菓子パーティの発案者は、姉貴だ。
俺も秀人もお菓子パーティはいいのだが、夕食が早かったせいでお腹が空いているので、先に夜食を食べる事を提案した。
これに反対する人はいなかった。
これで家に帰った後する事は決まった。
それからコンビニに着くまでは、なんのお菓子を買うかで盛り上がった。
コンビニに着くと各々好きなところを見て回っていた。
俺と秀人はカップ麺の棚を見ていた。
俺達は帰ってから食べる物を選んでいるので真剣だった。
俺の手には味噌ラーメンと醤油ラーメンがあった。
俺はこのどちらかを買う事にした。
札幌味噌ラーメンも捨てがたいが、今日は生麺の醤油ラーメンにした。
一方で秀人の手には、カップ焼きそばがあった。しかも塩焼きそばだ。
それを持って俺達は、姉貴達がいるお菓子の棚の方へ行く。
姉貴達のところへ行くと一人3つずつお菓子を持っていた。
その中にはパーティらしい袋のお菓子を持つ那須野さん、余ったら分けやすい小分けのお菓子を持つ千佳、自分の趣味全開のお菓子 (おつまみ) を持つ姉貴。
「姉貴、お菓子パーティって知ってる?」
「当たり前でしょ」
それならその手に持っている長いカルパスなんだ、そのわさびの柿の種はなんだ、なんで1人用のチーズを持っているんだ。
「文句があっても聞かないよ、全部私の奢りだし」
それを言われると何も言えなくなってしまう。
全部とは、お菓子だけでなく俺と秀人が持っている夜食もだ。
だから姉貴にはこれ以上何も言えなかった。
俺達はコンビニで買い物をした後真っ直ぐ家に帰った。
家に帰ったらお待ちかねの夜食タイムだ。
時刻は午後9時、まだ夜食を食べても罪悪感を感じない時間だ。
俺と秀人はヤカンで沸かしたお湯をカップ麺の中に注ぐ。
グツグツと音を立てるお湯に期待感を膨らませながら3分待機だ。
3分経つと秀人はお湯を捨ててから塩ダレを入れ始めた。
俺の醤油ラーメンは後2分待機だ。
俺の横からは、温かい湯気に乗って塩焼きそばの香りがする。
俺はその匂いによってより食欲が湧いてきた。
秀人が食べ始めた頃、俺の醤油ラーメンも時間が来た。
蓋の上で温めておいた、スープをカップの中へと入れてよく混ぜる。
そして口の中へと麺を入れた。
「うっま」
俺の口の中には醤油の味が染み渡り、生麺の歯応えのある食感を楽しむ。
俺も秀人も無言でカップ麺を食べ続ける。
やはり夜食はカップラーメンにつきる。
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