魔法少女の治癒術士0̸

ユウキ・アカツキ

第1話治癒魔法

「あん……そこ、そこいい……」


「……少し、黙って……」


「えぇ……?いっ、あぁ……っ、だけどぉ……」


「もう、気が散る……」


 全く……傷を治してるだけなのにも関わらず、こんなにも色っぽい声を出されると……

 私が男だったらほんとに何されてるかわかんないんだよ?


 なのに、こんなにも信頼しきっちゃって……この女たらしが。


「いったぁぃ……うぅ……ああっ……!!」


「痛いのは我慢して、次は腕ね……」


「ちょっと……一回だけ……きゅうけ……」


「そんなものはない、天耀贈物ライトニングギフト


「うぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 こんなにも、変形するほど負傷するなんて……どんな戦い方したんだ……

 まあ、奴らが強いというのは私も知ってたけど……まさか、ここまでとは思いもしなかったな……


 全く……ほんとに、あんたは、人として戦えっての……


 いや、


「あぁぁぁぁ!!!!」


 仲間の、の悲鳴が今日も響く。

 これを、あと……何千、何万回と聞けばいいのだろうか……

 ほんとに、不快でならない。


 いや、不快以外の何物でもない……

 どうして、こんなことをしなければいけないんだ。

 どうして私には……こんな、不条理な能力しかくれなかったんだ……


 ほんとに……この世にも……この魔法少女というにも……腹が立ってしょうがない。


 ほんとに……どうして私だけこんな思いをしなきゃいけないのか……

 不思議だよ、朱鳥……



 遡る事数年前……


 私達の世界は……とても平和だった。

 平和で、穏和で……とても、とても……素敵な世界だった……

 というか、むしろ……殺しがあってもすぐ立憲されて刑まで施行される徹底ぶり。


 それほどまでに、平和という言葉が似合っていたこの世界……

 いや、世界というより日本が、だろうか。


 この日本という国は犯罪を許すことは無い。ということで、一躍有名になるほど……とてもとても厳しい国だった。

 ものを落とすことでさえも罪になる。

 それだけ、とてつもないほど恐ろしい国だとも言われるほど……


 だけど、そんな国や海外の諸外国が突然崩壊する事件が起こることになる。


 それが、


 世界をリセットしようという、馬鹿なことをしようとしたとある国によって……生み出された化け物たちがその国を崩壊させた事件。


 それによって、世界は一気に混乱に陥った。


 日本は日本で首相陣は安全なところに逃げ、大統領達は国を放棄するといった……とてつもないことをしながら人が統治していた国という国は終わりを迎えた。


 だが、そんな時に……救世主と呼べるかは分からないが地球外から……侵略者とは言えないがこの世界を救うためにやってきたもの達がいた。


 そいつらの名前は、自らをサルバトールとか言っていたけど……私には、死を売る悪魔の商人のようにしか思えなかった。

 どうしてだろうか、だって、自分の願いを叶えたら例のゼロリベリオンによって生み出された化け物と戦わなければいけない運命を授けられるなんて……

 そんなの……嫌だろう。


 だけど……そんなことを思っていたのにも関わらず、私は……沙上舞羽悠さじょうまばゆは契約してしまった。


 襲われていたから……力が欲しかったんだ……

 なんとしてでも、こいつらから生き残る力を……

 だけど、それは……間違いだったのかもしれないなと今でも思う。


 最初は……奴らを倒せると思って何とかやっていけてた。

 人を守るために……そして、この世界で生き残るためにとか……

 そんな愛と平和のために戦えていた。


 だけど、とある時に……が分かってしまった……

 それで、私は……


 逃げ出した、戦いから、生き残るための決意からも、自分からも……

 そして……大切な友だちからも……


 皆、皆、皆……逃げ出したんだ。


 その時に、生き残る術を……私は編み出した。


 非人道的な事や戦いで傷ついた魔法少女達をことだ。

 あいにく、自分の魔法が癒すことだということが分かったからそれを利用することが出来たから良かったけれど……


 でも、それをずっと続けていくうちに私も私で心が疲れてしまったみたいだ……

 いや、壊れた……という方が正しいのだろう。

 癒すことの代償として、その人の過去やどうやってやられたのか……


 そういう事を続けていたというのも……生き残るためだったから……仕方ない事なんだけど……でもだから、こそなのだろうか。

 私は……これまでずっと……色んな人を別の意味で助けて……それで、死にに行かせていたり……と。


 そんなことをし続けて……


 数年が経った。


 あれから、非合法なものを報酬にしてもらい私は生き残り続けた。

 果たして……ほんとにそんなので大丈夫なのか、とか思っていたが、まあ人気が結構あるみたいだし……


 私的には、こんなこと早く辞めたいけど生き残れるのならしょうがないと思うかもな。


「ふぅ……ありがと!ほんとに!」


 目の前の少女……と呼べるか分からないけれど魔法少女はそう言った。

 金髪が……ほんとに綺麗だなぁ……なんて、思ったところでって話なのだろうが……


「ん?どしたの?」


「いいえ、なんでもないわ、ただ……あなたが無事帰ってきてくれたら……それでいいかなって」


「へぇ、あんた聞いてたよりだいぶいい人じゃん」


「いい人……なのかな」


「ええ!すごいいい人よ!」


 なんだろう……この人に褒められても褒められた気がしないんだけど……

 それ絶対気のせいじゃないんだが……

 まあ、別に……褒められようが褒められまいが私には関係ない。


 きっと、死にゆく人だから関係ない。


 きっと……きっとね。


「それじゃあ!また行ってきますかー!!」


「はいはい、行ってらっしゃい」


「えっへへ!行くぞぉぉぉ!!!」


 はぁ……こうやって見送るの、何度目だろうなぁ。

 まあ……数え切れないくらい色んな魔法少女達を送ってきた。


 それで、戦い、死に、遺体となった子たちを見てきた。

 それだけ……この事象、光景は当たり前になってしまったんだ。

 だから、きっと……こうして見ているこの後ろ姿も……多分だけど、もう二度とと見ることは絶対にないだろう……


「期待なんて……してない、するはずがない。だって……皆、皆……他の人間からしたら英雄のように見られてるんだから……私みたいに逃げることなんて……出来ないんだからな……」


 私だけが……なんだか、逃げた感じで悔しい……なんて気持ちもないけど、魔法少女の戦いを知ってる人間からしたら、どうせ……逃げたんだ、なんで英雄的な死をしないんだ……


 とか何とか、言いながら私に言ってくるんだろうなっていうのがすごいわかる。


「ほんとに……めんどくさい、感情を押し殺してたはずなのに……久しぶりにあんなに明るい子と出会ったんだから、期待しても……いいじゃん……だめ?まばゆ……」


 心の中の私に……そんなことを問いかけても……

 どうせ、無駄だって……帰ってくることくらいは分かってる……

 でも期待したいんだ……あの、名前も知らない少女が、どうやって帰ってくるか……


 そして、私はしたい。


 あの子の名前を聞いて……今度こそ、一緒に居てもらうために……


 甘い言葉をかけることになるかもしれないけれど……私は……私は……!!


「あの子の名前を、聞きたいんだ……!!」


 そう、願いながら私は水晶をかざしあの子の場所を探り始めた。

 どこにいるのかな……

 大丈夫かな……無事かな……ほんとに、無事だったらいいんだけど……


 そう思いつつ、私は一心不乱に探した。


 どこにいるのかなんて……魔力で探れば、容易いこと……!!

 どこにいるの……お願い……見つかって……!!


 映る映像は、みな化け物がうろつくところばかり……

 あとは、魔法少女達が戦ってる姿……とか色々とある。


 だけど、見たいのはそれじゃない……

 私が見たいのは……あの子だ……

 あの金髪の……長いブロンドの髪をなびかせながら戦ってるあの……!!


「いた!!……っ!?」


 そこに映っていたのは……

 ……


「あは……あはは……あっはははははは!!!!」


 やっぱり……やっぱりそうだ……私がやることは全て……

 無駄なんだ。


 意味なんてない……


 ただ……ただ……虚しいこと……


 だから、私って……ほんとに生きる価値なんてないんだ……

 助けるだけの運命だから……


 だから、私は……もう、諦めるしか……方法が……ない……


「あー……えーっと……」


「なに……?今日は店じま……え?」


 そこに居たのは……腕が片方なくて……血だらけになっている。

 それに……全身ボロボロなのに、よくここまで来れたって褒めたいくらいの女の子……


 金髪で、髪が長くて……私より少し胸が大きくて……頭に帽子みたいなのを被った……可愛い……女の子が……そこにはいた。


「また、怪我しちゃった……助けて、くれる?」


「……ばか、もちろん!」



 to be continued

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