第21話 ゆー君。それはダメだよ……

《黎明高校》


「蘭々のお嫁さん役は私がやるんです! ですので、小春さんはそこら辺に生えている"草"役でもやっていて下さい」


「や、やるわけないでしょう! ていうか、蘭の元カノの私が蘭のお嫁さん役をやるのが当たり前だもん! だたの幼馴染みさんは引っ込んでいてくれるかな?」


「な、なにを~!です。もう付き合っていないくせに彼女ぽく振る舞っている人がなに言ってるんですか? 現実を見て下さい。小春さん! 蘭々は私の大切な幼馴染みで貴女の彼氏君ではありません。はい! 復唱ふくしょうを求めます。どうぞです!」


「それをいうなら。静華ちゃんもだよね? 本当に未練たらたらはどっちなのかな? 蘭から聞いてるよ。静華ちゃんって毎朝、蘭の耳元で……」


「フニャア!! なにを皆の前で暴露しようとしてるんですか? 訴えますよ! 小春さん!」


「んむむ! 蘭! 助けてえぇ!!」


 最近のうちのクラスの放課後の風物詩ふうぶつしだ。


 Aクラスの美少年アイドル蘭の相方を決める為に、毎日の様にあの2人が争っている。


「小春も静華ちゃんも止めなよ~! クラスの出し物文化祭に間に合わなくなるよ~!」


 蘭が可愛い声であの2人をしかっているな。意味ないだろう。そんな優しい言い方じゃあ。


「建宮君もあの2人を止めてよ~!」

「ん~! 楽しそうだし良いんじゃないか?」

「なんでよ?」

「なんでって……だって、あの2人。台本のセリフは全部覚えているんだろう?」

「う、うん。まあね。執念で完璧に覚えたんだって」

「執念って……」


 しかし、体育館ステージの貸し時間は佐伯がおさえてくれたし。


 小道具や大道具は藍と真が中心に作り終えて。


 台本は俺と夕凪が考えただろう。


 主人公役以外の練習も、バッチリ残す所は王子役を決める所でたまずいてるって凄いな。


「この際なら午前の王子様役を佐伯がやって、午後は一ノ瀬が担当すれば良いんじゃないか? それで2日目の講演はその逆をやればどっちの役もWINWINに……」


「「「それだ!!」」」


「……どれだ?」


 ……なんか。唐突に俺が言った案が採用されたようだ。


 俺なんかやっちゃいました?みたいな感じなんだが。まあ、クラスの劇の方向性がちゃんと決まって良かった良かった。


《図書室 放課後》


「ゆー君って時々、凄く冴える時があるから侮れないよね~!」

「なんだよ。それ、褒めてないだろう。藍」

「うんん。普通に褒めてますよ~!」


 放課後。昨日の藍のおとしに屈した俺は図書室で旧校舎の七菜子について調べていた。


(藍ちゃん~! 気になるやつ集めてけば良い感じ~?)

(ふ、古い学校資料も持って来ますね……)


 秋月部長を抜いた。俺達4人でだが。


「……なんだ。七宮のやつ。図書室だと騒ぐイメージしかなかったんだが。随分と大人しいな」


「ゆー君。知らないの? 七宮さんって結構なお嬢様で、学校のルールとか凄く気にする娘なんだよ。たまに暴走しちゃうけど」


「は? 七宮が良いとこのお嬢様?……藍。エイプリルフールはまだまだ先だぞ」


「嘘じゃないですよ~!……七宮財閥って、聞いたことないのかな? ゆー君は?」


「七宮財閥?……あ~! ほら、最近の俺、筋肉データしか見てなかったわ」


 なぜか藍にあきれ顔をされている俺。


 最近の藍さんは、七宮の影響を受け始めているのか。俺への口擊性能が向上している気がするぜ。



「そういえば。秋月パイセン。今日は何してるし?」

「ん? 聞いてないのか?」

「何がだし?」

「旧校舎で妹と召使いちゃんをお仕置きするだと。それで今日の部活は無しになったんだぞ。昨日、部長から連絡来たろう?」

「連絡だし~?……」


《旧校舎 秋月彩葉あきつきいろは専用お仕置き部屋》


パシンッ!

「全く。下ろしは秋月神社以外にやっちゃ駄目って、パパからいつも言われてるわよね? なんでやったのかしら? 七菜子、舞」


「ひいい!! ごめんなさい。お姉ちゃん。謝るから許して……ていうか。昨日に続いてここでもお仕置きするなんて聞いてないよ」

「そうそう。ちょっと待って、なんで私まで巻き込まれてるの?」


「連帯責任よ……全く秋の旧校舎はそういう風になりやすいのよ。やるなら冬にしてくれれば良かったわ」


パシンッ!

「「ごめんなさい~!」」





 七宮はそう言うと静かにスマホをポケットから取り出して見た。


「……あ……確かに連絡来てた来てた。つうか。ウチはちゃんと知ってたし~!」


「嘘つけ。アホギャルを完全に既読スルーしてたな。アホギャル」

「ウキー、誰がアホギャルだし! ウチはこれでも、建宮っちよりは成績良いんですけど?」


「学校での生活態度は俺の方が上だ。それと、俺、最近は白鳥さんと一緒に勉強してるから成績上がってきてるんだぜ。勉強って楽しいよな。七宮」


「(カチンッ!)……そんなら。ウチが建宮っちをお馬鹿に魔改造してやるし~! ムキー!」


「ちょっ! 頭を触るなアホが移るし~!」


「移らんし~! アホ建宮っち~!」


「うるさい。七宮。七宮、うるさい。図書室ではお静かだろうが」


 まぁ、今日の図書委員は藍で図書室には俺達しか居ないので好き放題できる為、藍に注意されない限りはある程度騒いでも……いや駄目か。


「窓際のご令嬢アナスタシアさんとか……サングラスをかけた五条。夜の校舎徘徊……へんな記事しかないですね。雨宮さん」


「だね~……もっと古い資料はあるだろうけど。旧校舎だしね。今日は旧校舎に絶対に近づくなって、秋月部長に念を押されてるし。これ以上は踏み込むなって事なのかな?」


「……恐らくわ……ですが」


「黎明高校の七菜子さんか……いったいどんな人なんだろうね? ゆー君を口説こうした不届き者は。出会ったら首をきゅっと締めてあげたいよ」


「ひ、ひい!……じょ、冗談ですよね? 雨宮さん?」


「ん~? 私がゆー君に関わる事で冗談は言わないかな? 大切な人に何か悪い事をしようとしたんだよ……許せないに決まってるよ。ゆー君は私にとって本当に大切な人なんだもん」




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