奇想天外博物館――3分間、ご来場ください――

干し焼き芋

短い医者

 あるところに、一人の医者がいた。彼は、凄腕でもなれば、藪医者でもなく。要するに、普通の医者である。


 ただ唯一、彼は他人とは違う強烈な個性を持っていた。なんと、彼は自分の身長を変化させることができたのだ。


 大人には高い背で、安心感を。子供には低い背で、怖がらせないように。送信札ができるように意識していた。


 だが、なぜなのだろうか。誰からの評価も平凡だ。身長を変え、自分は工夫をしているというのに何がいけないのか。彼は悩む。だが、答えは出ない。


 ある日、小さな女の子が来た。この日も彼はいつも通り、背を小さくし、威圧感が小さくなるようにと工夫をした。


「今日はどうされましたか?」


「この子が、おなかが痛いっていうので」


「なるほど……君、具体的にどこがどのように痛いの?」


「えーとね、うーん……なんていうんだろう……」


「チクチクとか、ドーンとかって表現するとどうなの?」


 判然としない態度に、彼は怒気を含めてそう問う。


「うーん……痛い」


 黙り込んでしまう少女。


「言わなきゃわかんないだろ! どう痛いんだ!」


「えっと、えっと……うーんと……」


 少女は泣き出してしまった。


 それから、彼は親から症状を聞き、暫定的に腹痛の薬を処方した。何がダメだったというのか。こちらは医者として聞かねばならぬことを聞いただけだったというのに。


 だが、彼は少女の母親が最後にはなった「心の丈を合わたほうがいいのではないですか!」という言葉が忘れられない。


 そうか。医者は唐突に理解した。自分は身長だけを合わせており、心を合わせていなかったのだと。


 彼は晴れやかな気分になり、次はどう対応するべきかを思案する。そうとわかればもう改善するだけだ。だが同時に、少しだけ恥ずかしくもなった。


 だが、そんな失敗や感情が成功へのばねになるのだ。


 こうして、一人の凡庸な気の短い医者は、少しだけ良医に近づいたのであった。

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