・自認 知らない天井
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第弐話「見知らぬ、天井」において、主人公の碇シンジが発した有名なセリフ「知らない天井だ」。
これはシンジが使徒との初戦闘を経て病院で目覚めたとき、また下宿先のベッドで仰向けになったときに発するセリフです。
世の中にはたくさんの天井があるわけですけど、とりわけ病室の天井について、もし天井に意思があるとするならば、そして天井が『エヴァ』を視聴済だったならば、きっと彼らの自認は「知らない天井」だろうと思うんですね。
だってもし僕が病室の天井だったらば、新たな入院患者が自分の真下で目醒めるときを本当に楽しみにすると思う。
患者は絶対思いそうじゃないですか、「知らない天井だ」って。僕を見てそう思ってほしい。主人公ぶってほしい。
まあでも、これは自認である一方で本当に「知らない天井」ではあるわけで、原作のシチュエーションには大まか沿っていると言えます。
ただ、世の中に数多あふれるその他の天井たち。彼らに関してはどうでしょうか。
彼らはシンジくんの来訪を待っているんです。なんせ「自認・知らない天井」ですからね。
自分の真下でシンジくんに見上げてもらって、「知らない天井だ」って呟かれてみたいという願望を抱えているわけですよ。
今あなたがこれを読んでいるのが自室だったとして、ちょっと天井を見上げてみてください。
そいつはもう、あなたの帰宅に飽き飽きしていますよ。「自認・知らない天井」にとって、知ってるあなたが帰ってくる毎日は退屈で仕方ない。
天井からしたら、知らないやつ来いよと。知らないやつ来て、自分を「知らない天井」と思わせてくれよ、とそう憤っているに違いありません。
いや、もしかしたら、あなたが「自認シンジ」の場合もありうる。
自分のことを世界の中心にいる主人公だと思い込み、何らか世界の命運を握っていて、コミュニケーションが不得手なので周囲とは表面的な付き合いになりがちで、それでもいつか綾波レイのような存在が現れて、自分の隣でぽかぽかする未来が来ると思い込んでいるかもしれない。
あなたが「自認シンジ」だった場合、「自認・知らない天井」とお互いにウィンウィンの関係にありますね。
「自認シンジ」のあなたは、毎回「自認・知らない天井」を見るたびに「知らない天井だ」とつぶやいてあげてください。
すると「自認・知らない天井」も、今自分は「自認・知らない天井」ではなく「知らない天井」そのものであると快感を覚え、絶頂に達することでしょう。
興奮しすぎて雨漏りし始める可能性すらあります。
「自認シンジ」の皆さん、街に出てください。
そしてさまざまな屋内で横になってあげてください。
そこにはあなたにとって「知らない天井」が広がっている。それすなわち、あなたが「自認シンジ」をシミュレートできるチャンスであり、また「自認・知らない天井」が本物の「知らない天井」になれる、唯一のチャンスです。
パチンコ屋の天井が、高砂部屋の天井が、公衆トイレの天井が、みんな「自認・知らない天井」です。彼らの夢を叶えてあげてほしい。
知らない天井が、知らない天井だと、あなたに知られたがっています。
君には君にしかできない、君にならできることがあるはずだ。
誰も強要はしませんが。
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