第3話 魔法が使えない

 ユカブキは座学の成績は上位で、剣や槍・盾の実習についても優良の腕前だった。ただ彼は、勇者専科にいながらただ一人魔法を使うことができなかった。入学以降の魔力測定や魔法実習においても、彼が魔法を使える裏付けは皆無だった。ユカブキがそれでもひたむきだったのには理由がある。教師陣が落第させなかったのには理由がある。同学が彼を見下さなかったのには理由がある。

 一人前の勇者とて、魔法使いや賢者と違って魔法は一つしか使えない体質なのである。そもそも魔力とは体力、精神力、集中力を総合的に鍛錬して生み出される、分かりやすく言うと気功とかの類の延長であり、潜在能力、火事場のクソ力のような類を意図的に使えるようにしたものである。

 魔法を行使するための詠唱とは自然に呼びかけ、一種の契約状態にするための音と意味のまとまりで、詠唱によって自然にアプローチして自然の力を生かしてそれを人間が平均的人間の能力外の力として行使できるようにすることだ。

 よって魔法科の授業内容は単なる放置プレイのようなものではく、体系立てられている集中力の鍛え方とか、精神力の鍛え方とか、体力を体育は別のレベルで鍛える方法とか、あるいは潜在能力や火事場のクソ力を意図的に使えるようにするための方法の鍛錬とか多岐にわたり、それらの座学も行われる

 こういう理由で入学してまだ数か月のユカブキが魔法を使えないことにも理解が向けられているのである。

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