12日目

調査12日目 2021年11月27日


地方テレビニュース 電子版(続報)

続報・「ひとり鬼遊び」事件、被害者は特定匿名コミュニティの参加者か

2021年11月27日


 古賀優作容疑者の逮捕により主犯が特定された連続集団暴行事件(通称:「ひとり鬼遊び」事件)について、警察の捜査により、被害者らが事件の前後で特定の匿名掲示板やSNSコミュニティに出入りしていたことが判明した。


 警察当局は、これらのコミュニティが単なる情報交換の場ではなく、特定のルールや場所を指示し、事件の被害者、特に儀式の失敗者と目される人々を意図的に誘導していた可能性を危惧している。


 現在、被害者らが出入りしていたコミュニティのアカウント凍結が順次進められている。しかし、今回の事件に関する情報や、同様の加害行為を助長する内容が、異なるプラットフォームに次々と拡散されている状況が確認されており、当局は情報拡散の阻止に全力を挙げている。


 また、捜査関係者への取材により、古賀容疑者が数年前にも清明大学の別の女性に対し、執拗なつきまとい行為を行っていたことが明らかになった。当時の事件は、被害女性の知人男性の介入によって発覚し、古賀容疑者が大学の顧問を解任されるに至っている。今回の事件も、知人男性に対する逆恨みと常習的な加害欲に基づくものである可能性が高いとみられている。



 ◇



地方テレビニュース:『デイリー・トピックス』より(専門家インタビュー) 放送日時: 2021年11月27日 08:30


キャスター:「一連の『ひとり鬼遊び』事件は、主犯である古賀容疑者の逮捕によって一つの決着を見ました。しかし、ネット上では事件の詳細、特に被害者の情報が依然として拡散の危機にあります。引き続き、西野賢治さん、神代岳さんにお話を伺います。西野さん、主犯が特定され、この卑劣な犯罪は、やはりネット社会の闇が原因だったと?」


西野 . K(社会評論家/オカルト否定論者):「その通りです。古賀容疑者が特定されたことで、『呪い』などという曖昧な言葉は、完全に終止符が打たれたと考えるべきでしょう。この事件は、承認欲求と復讐心、そして匿名性が結びついた人為的な犯罪です。彼の動機は、つきまといの過去や、大学時代の恨みという、極めて人間的で、科学的に説明可能なものです」


キャスター:「つまり、事件の裏に超常的な力はなかったと?」


西野 . K:「断言します。集団心理と技術的な巧妙さで『呪い』を演出したにすぎません。古賀容疑者もフォーラムのメンバーも、全て現実の逮捕という罰を受けました。呪いが本当に存在するなら、なぜ彼らは捕まったのでしょうか? 論理的に考えれば明白です」


キャスター:「神代さんはこの西野さんの見解に対し、依然として異なる見解をお持ちだと伺っています。主犯が逮捕された今も、事件が犯罪の範疇を超えていると?」


神代 . T(元公安警察):「ええ。古賀容疑者が逮捕されたこと、これは現実の法の裁きとしては喜ばしいことです。しかし、この事件の恐ろしさは、彼が『鬼』という呪いに、現実の悪意を接続したという点にあります。古賀容疑者はシステムを『起動』させた人物に過ぎず、呪いそのものはまだ生きている可能性があります」


西野 . K(強い口調で、身を乗り出し):「待ってください! 鬼とは何ですか? 匿名掲示板のことでしょう! それはサーバーを止めれば終わりです! それを『生きている』などと、また非科学的な、呪いの肯定論を展開するんですか!」


神代 . T(静かに):「私が言っているのは、この儀式が贄の『尊厳を破壊する行為の未完遂』という、極めて具体的な呪いのトリガーを、被害者に残してしまったという事実です。古賀容疑者の逮捕によって、物理的な強制力は消えましたが、呪いの残滓は今も被害者の魂に深く刻み込まれているでしょう」


西野 . K(声を荒げて):「それはPTSDです! 犯罪被害による精神的なトラウマです! それを『呪いの残滓』と呼んで、世間を惑わすのはやめていただきたい! 専門家なら、科学的に証明された言葉を使うべきでしょう!」


神代 . T(冷静に、西野の目を見て):「トラウマやPTSDが、なぜ特定の『儀式の完遂』という形で、被害者を苦しめるのでしょうか? これは、古来よりこの地に伝わる『鬼』の伝承と、不気味なほど一致しています。私は、事件の本質を解明するため、自分の知識の範疇を超える『現実』を否定すべきではないと、西野さんに申し上げているのです!」


キャスター(焦った様子で、間に入り):「っ……お二人とも、再び白熱したところですが、残念ながらお時間です。引き続き、この事件が残した社会への影響を注視していきたいと思います」



 ◇



橘あかりの手記:残された本物の呪い

日付/場所: 2021年11月27日  水元透の部屋


 古賀先生は捕まった。世間は「事件は解決した」と報じている。しかし、私と葵の呪いは終わっていない。


 夜になると、頭の中で「晒せ」「完遂しろ」という声が響く。窓の暗がりに、「暗がりの鬼」の黒い影がうごめいて見えることもある。


 古賀先生は「ひとり鬼遊びフォーラム」を拡散した人間に過ぎない。儀式の背後にあるのは、古くから伝わる本物の呪い。


 私と葵は、儀式の核となる「ひとり鬼晒し」を未遂で中断した。そのせいで鬼が現れて見える。


 透さんをこれ以上巻き込めない。私は、私と葵に憑いたこの「暗がりの鬼」という本物の呪いを、解呪する。



 ◇



資料種別: 捜査報告書添付資料(機密・特定記録) 記録日時: 2021年11月27日 23:45

場所: 千葉県警 捜査第四課 資料確認室

担当者: 刑事・山崎(50代)


1. 状況観察記録(断片)

古賀優作容疑者(以下、K)の取り調べ終了後、山崎刑事が押収された通信機器から出力された資料の最終チェックを実施。室内には、Kの供述記録と、被害者に関する屈辱的な映像記録の静止画資料が広げられていた。


資料には、「ふたり同時公開」時の屈辱的な体勢をとる被害者と、「透の部屋」から盗撮された上半身裸の被害者の画像が混在。これらはKの憎悪の核心を示す証拠品である。


山崎刑事は当初、資料を淡々と確認していたが、02:15頃、作業が突然停止。


2. 山崎刑事の行動観察と音声ログ


23:15:33

広げた資料の中央にある静止画(被害者の顔が映る)を凝視。眼球の動きが停止し、心理的な集中力低下が見られる。


23:15:45

姿勢を崩し、資料を置いたテーブルに顔を近づける。視線が画像に固定される。


23:16:01

顔が画像に極端に近づき、吸い寄せられる異常な執着を示す。


23:16:15

静止画に手を伸ばし、指先で画像を強く押さえつける。顔に無意識的な欲望と倒錯の色が浮かぶ。周囲の者に目撃された場合、ハラスメント行為と見なされかねない異常な行動。


23:16:18

発語。声は極めて乾いており、通常の発声ではない。自己暗示、または強迫的な言動の可能性あり。

「……晒さなケレバ……」


23:16:20

ハッと我に返ったように資料から手を放す。表情は混乱と疲労。室内の照明を強く点灯させる。

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