【第2話】総帥の絶望と純粋なアプローチの勘違い
夜。万屋が閉店した後、悠真は裏口でゴミ出しをしていた。
その裏路地の隅に、一人の女性が項垂れて座り込んでいた。
紅月緋真(こうげつ ひま)。彼女は組織の裏切りにより、総帥としての威厳と立場が揺らぐ、絶望的な状況にいた。
悠真は、そんな彼女を見つけ、当然のように駆け寄った。
「わあ!大丈夫ですか!?そんなところで座り込んで…」
悠真は、純粋な善意で話しかける。
「何かお困りのようですが、よろしければうちに相談してください。うち、何でも屋ですから」
緋真の瞳が、僅かに光を帯びる。悠真は彼女の美貌に気づき、少し顔を赤くした。
(この男、私の失態と、私が心の底で「力」を捨てたがっていることまで見抜いている…!そして、あえて「何でも屋」を名乗り、私をこの重い地位から解放し、ただの一人の女性として愛したいという究極の純粋なアプローチを仕掛けてきたのか…!)
悠真は、彼女の目元の隈を見て、単なる疲労だと判断し、優しく声をかける。
「疲れているなら、無理しないで。悩み事は一人で抱え込まず、まずは信頼できる人に相談するのが一番ですよ」
悠真の言葉は、緋真の解釈フィルターを通ると、さらに甘美なメッセージとなる。
(信頼できる人…つまり、総帥の地位を捨て、彼に全てを打ち明け、彼の愛を受け入れろと…!?この男、私の全てを愛し、私を幸福な日常で支配したいというのか…!)
緋真の頬は、先ほどまでの絶望を忘れ、一気に赤く染まった。
「あ…あ、あなたのその純粋な愛…一人の女性として、しかと受け止めましたわ…!」
そう言い残し、緋真は路地裏の闇に消えていった。
===作者コメント======
盛大に勘違いさせていきます。
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