一直線の森

 樹界というものは密集しているものである。それらは迷いの森などダンジョンではよく呼ばれるが一直線の森は違った。ルートが樹界と樹界の間に人工的に作られたんじゃないかってくらい堂々と伸びているのだ。天空から見ると砂塵が舞い山火事のように広がっている。そこに人がダッシュしているのだ。いや・・・・・・彼らはフルーツだ。


「ウオォォォォ!!!!」


 ここで疑問を持った者達よ。エグゼクションマークが四つあるのにお気づきか。この部分でこれは人数の表しである。


「姫ー!」


 ズバババババババ‼︎

 勇者スイカは怒涛の勢いで矢継ぎ早に襲いかかる『SM』達を切り裂いていく。


「早いよー!」


 魔法使いレモンは必死に意中の相手であるのと同時に積年の恨みを持つ者を追いかける。


「待ってくれー!」


 そしてムンクのブドウはこれまた思い人を見つめながらその足を動かす。


「足を動かそう。そうすれば悩みなんて消えるはずだーい」


 アックスマンのリンゴは悩んでいた。

 なんだろう、この胸の中のモヤモヤは・・・・・・それでもオレは走る。


 一直線の森。

 それは長いルートに森が挟んで存在するだけの森と呼べるのかはたまた道なのか・・・・・・いや、この際、『森』と呼んでおこう。

 モンスターがとにかくたくさん出没する『森』なのだ。


「ねえ、あそこに種が落ちてたよ!」


 レモンが走りながら発見した物の名前を叫んだ。


「そんな物逐一、拾ってられるか!今はとにかく姫だ!姫と結婚するんだ!!!」


 種とはフルーツ族の命の証である。

 フルーツ達が死ぬのと同時に種となりそれは輪廻の土へと埋めなくてはならない。

 しかし、勇者スイカは、


「姫ー!!!」


 遠い存在の事で頭がいっぱいである。


「させない」


 走りながらもレモンは冷酷に呟く。

 だが、一番声が届くはずのスイカは、


「結婚!!!」


 夢と希望で満ち溢れている。


「拙者は応援するでござる!」


 叶わぬ恋だろうなと思いつつもブドウは背中を押したい。

 それでも、己と向き合う精神を持ち合わせる奴は、


「添い寝ー!!!」


 欲情を剥き出しにしていた。


「頑張れよな。オレだって一級品の林檎になっ……」


 リンゴが迷いの中、自身を励まし友と呼べるフルーツを応援する言葉を送るが、


「でぃぃぃぃぃぃっぷきっす!!!」


 それは我の強い精神にて独り言として終わってしまった。


「ひゃっ」

「欲情まみれでござるな」


 レモンとブドウは呆れる事を通り越して感心している。


「・・・・・・うーむ・・・・・・」


 リンゴはどこか心の中で靄が渦巻いているようだ。


「ギャハハ」


 突如、チョコゴロンが現れパーティの行く手を塞ぐ。


「あ、中ボスだ」

「哀れ」


 致し方がないが『SM』の出現にレモンとブドウは同情している。

 ズバ!


「ギャハッ!」


 スイカの一刀でその場を凌いだ。

 文字通りの瞬殺である。

 テテテテ〜


「オレ達ってなんだろう?」


 一直線の森のゴール手前でリンゴは呟いた。

 ドシャッ!


「森を抜けたぞー!」


 スイカはこのダンジョンで一番まともな事を最後に言った。

 終わりよければすべてよしとはこの事なのか。

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