第二章:高校の生徒会に入ってみる

第13話:前島さんとLIME交換をしていく

 それから二日後。


―― カリカリ……


 今は学校の休み時間。俺は教室でノンビリと一人で勉強をしていた。


 友達を頑張って作るぞと意気込んでみたはいいものの、今の所は友達が出来る気配は皆無だった。


 まぁそりゃあこんな湿布やテープ剤をペタペタと貼り付けてる男と話してくれる生徒なんている訳ないからな。ちょくちょく委員長が話しかけてくれるくらいで、それ以外の生徒は話しかけてくれない。


 それなら俺の方から誰かに話しかければ良いんじゃないのか?? って、思うかもしれないけど……でもこんな顔面に湿布を貼りまくってるヤバそうな男が急に話しかけてきたら普通に怖いだろ。


 だからまずは俺の怪我を治るまでは大人しく自分の席で勉強をする事にしたというわけだ。


「あはは、佐倉はいつも面白い冗談言うんだからー! お腹痛い痛いー!」

「いやいや、別に私面白い事なんて言ってないけどね! ってかそんな事よりもさー、そういえば麻弥は最近彼氏とどうなの? ラブラブなのかな??」

「うん、もちろん! 昨日も彼氏とデートしてきたよー! もうめっちゃ最高だった!」

「うわぁ、昨日もデート行ってたのかよー! ラブラブそうで羨ましいなー! あーあ、私も彼氏欲しいなー!」


 すると俺の勉強中に隣の席からとても賑やかなギャル達の声が聞こえていた。スクールカースト最上位集団のいつものギャル達だ。


 どうやら彼女達は恋人の話で盛り上がっているようだ。自分達の事を楽しく話して盛り上がっている分には全然良いと思う。でもそれからすぐに……。


「あーあ、彼氏がいる麻弥が本当に羨ましいなぁ……って、あ、ねぇねぇ見てよ! 隣の根暗キモオタ! 休み時間なのにさっきからずっと一人ぼっちで勉強ばっかりやってるよー! 本当にアイツっていつも根暗だよねー! 友達とかいないとかマジで終わってるー!」

「えっ? 嘘? あ、本当だ! あはは、せっかくの高校生なのに一人ぼっちなんてヤバすぎるよねー! マジでああいう暗い人生は送りたくないわー!」


(うるせぇ。友達いなくて悪かったな。ふん。まぁ別にいいけど)


「それはちょっと言い過ぎじゃない?」

「あははーって、えっ?」

「えっ?」

「え?」


(……え?)


「ど、どうしたのよ香織? 急にそんなつまんない反応しちゃってさ?」

「そ、そうだよ。いつもはそんなノリの悪い事言わないじゃんー?」

「普通に酷い事を言ってるなって思ったからそう注意しただけよ」

「え、えー? ま、まぁ確かにちょっと酷い事を言ったかもだけど……ほ、本当にどうしちゃったの急に?」

「もう高校二年なんだし、そろそろ大人になろうと思っただけよ。それで? 話を戻すんだけど、昨日は麻弥はデートは何処に行ってたの? もっと二人のデート話を沢山聞かせてよ」

「え……あ、う、うんっ! もちろん良いよ! ふふ、えっとね、昨日のデートはねー……」


 それからまた隣のギャル集団は恋人とのデート話に戻っていった。ちょっとだけ奇妙な空気が流れていたけど、でもすぐにまた楽しく明るい感じの盛り上がりを見せていった。


 そして俺はというと、気が付いたらペンを動かす指が止まってしまっていた。理由は今のギャル集団のやり取りを聞いていたからだ。今のやり取りを聞いてビックリとしてしまって、それでペンを動かす指が止まってしまったんだ。


 そして俺が何に対してビックリとしたのかというと、そんなのはもちろん……。


(前島さん……庇ってくれたのか?)


 ビックリとした理由は前島さんが俺の事を庇ってきてくれたからだ。そんな事を前島さんがしてくれるなんて……。


◇◇◇◇


 それから数時間後。


―― キーンコーンカーンコーン


 本日最後の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。という事でここからは自由時間の放課後になる。


(まぁ放課後になっても俺はやる事ないし、さっさと帰るかな)


 俺は部活もバイトもやってないので、放課後にやる事なんて何もない。なので俺はいつも通りさっさと帰る事にした。


 という事でさっさと帰るためにも俺は学生鞄の中に教科書やノートをどんどんとしまっていった。するとその時……。


「……ねぇ。ちょっと」

「うん? って、あぁ、前島さんか。お疲れっす」


 するとその時、スクールカースト最上位のギャル女子である前島さんが俺に声をかけてきてくれた。


「えぇ、お疲れ様。それとさっきはその……ごめん」

「さっき? えぇっと、もしかして休み時間の事かな?」

「そうよ。皆にはちょっと注意したけど、でもあれ以上の事を言うと皆の空気を悪くするだろうから、私には話題を変えるくらいしか出来なかったわ。だからその……アンタの悪口を止められなくてごめん」

「いやそんなの全然気にしなくて良いって。むしろ俺の事を庇ってくれてたじゃんか。それだけで十分だよ。ありがとう。前島さん」

「全然十分じゃないでしょ。というか私はアンタに謝罪しに来たというのに、何でアンタは私に感謝の言葉を送り返してくるのよ。はぁ、全くもう……アンタってつくづく変なヤツよね」

「はは、よく言われるよ」

「別に褒めてないわよ。はぁ、全く。あと、前々から言おうと思ったんだけど、さん付けするの止めてくれない? それと同級生なんだから微妙に敬語を使おうとしないで、タメ口で話しなさいよ」

「え? 良いの?」

「良いに決まってるでしょ。普通に考えて同級生なのに微妙に敬語で喋られたりするのっておかしいでしょ。だから今すぐ全部タメ口で話しなさいよ」

「そ、そっか。それじゃあお言葉に甘えて……わかったよ。前島」

「ん。それで良いわ」


 俺が前島と呼び捨てにしてタメ口で話していくと、前島はそれで良いと言って頷いてきた。


「それで? 前島が俺の声をかけてきてくれたのは、さっきの休み時間についての件を話したかったからなのか?」

「えぇ、そうよ。それともう一つ。アンタのLIMEの連絡先を私に教えて欲しいんだけど」

「俺のLIMEを? まぁ別に良いけど……でも俺の連絡先を知りたいって、どういう理由だよ?」

「そんなのアンタに話したい事があるからに決まってるでしょ。良いからつべこべ言ってないでさっさと教えなさいよ」

「わ、わかったよ。ちょっと待ってくれ。えぇっと……ほらよ。LIMEのコードを表示したから、前島のスマホで読み込んでいってくれ」


 俺はすぐにスマホを取り出して、LIMEのQRコードを表示させて前島に見せていった。


「ん。読み込んだわ。これでLIME交換は出来たわね。ありがとう。それじゃあ話したい時に連絡するから。改めてよろしくね」

「あ、あぁ。わかったよ。よろしく頼む」

「えぇ。という事でアンタへの用件はこれで以上よ。それじゃあ私この後バイトだから先に帰るわ。またね。大神」

「あぁ、またな。前島」


―― スタスタスタ


 そう言って前島は一足先に教室から出ていった。


 俺は前島を見送った後、自分のスマホをもう一度確認していった。そこにはLIMEの連絡先画面が表示されている。


「はは、この数日間でLIMEの連絡先が増えたなぁ」


 俺はスマホの連絡先画面を見ながらそう呟いた。連絡先には二件の名前が登録されている。委員長と前島だ。たったの二件ではあるけど、でも今の俺にとっては物凄く嬉しい事だった。

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