第5話:現実はそう簡単には上手くいかない
そんな決意をしてから数日が経過した。
「はぁ……」
朝。俺は教室の中で大きなため息をつきながら机に突っ伏していた。
こんな大きなため息を付いている理由はもちろんある。タイムスリップしてから数日も経ったのに、いまだにちゃんと話せる友達が一人も出来ていないからだ……。
いやもちろん俺は友達を作る努力はしたんだよ。つい先日だって漫画を読んでるクラスメイトがいたので明るく元気に話しかけていったんだ。でも……。
『あ、おはよう! その漫画面白いよね? 俺もその漫画読んでるよー!』
『え? あ、そう(ぺらぺら)』
―― シーン……
『あ、え、えっと……あ、そうだ。それアニメも面白いよね? 君はアニメも見てたりする?』
『……(ぺらぺら)』
『あ、え、えっとその……あ、もしかして漫画を読む時は集中したいタイプなのかな? もしそうなら急に話しかけちゃってごめんね?』
『……(ぺらぺら)』
『え、えっと……そ、それじゃあごゆっくりー……』
という感じで、何人かクラスメイトに明るく元気に話しかけてみたんだけど、でも誰に対しても会話のキャッチボールが上手く続かなかったんだ。なので結局友達作りはかなり難航していた。
(はぁ……こんな友達って作るの難しかったのかよ……)
高校生の頃はメンタルがやられていてウジウジとした性格だったし、不登校気味だったし、コミュ力が全然なくて、自分から話しかける事も全然してこなかった。だからあの頃に友達が居なかったのは当然の事だ。
でも高校卒業してから今までブラック会社の荒波に揉まれ続けてきた事で、俺のメンタルはかなり鍛えられたし、ウジウジとした陰鬱な性格ともおさらば出来た。マジで性格に関しては生まれ変わったと言っても良いレベルで変わった。
だから今の生まれ変わった俺なら、高校生の頃に戻って友達を作るなんてすぐに出来るだろうなって楽観的に思っていたんだ。
でも実際はそんな簡単にはいかず、友達作りはかなり難航しているという状況だった。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……。
(まぁでも時間はたっぷりとあるし、ノンビリと時間をかけて友達作りを頑張っていけば良いよな)
今の俺は高校二年生になったばかりの男子高校生だ。だからまだまだ学園生活を楽しむ時間はたっぷりと残っているんだ。
だから今すぐに友達が出来なくて嘆く必要は全然ないよな。
という事でこれから時間を沢山使ってクラスの皆と会話をしていって、それでいつかクラスの皆と仲良くなれるように頑張っていこ……って、あれ?
―― ポトン、コロコロー……
「えっ!? 麻弥って昨日彼氏とデートしてたの!? 何それ羨ましいんだけど!? ってかいつ彼氏出来たのよ!?」
「あはは、実はちょっと前に部活の先輩に告白したらオッケーして貰えたんだー! もうめっちゃラブラブだよ!」
「うわぁ、良いなー! 私も彼氏欲しいなー! 香織も彼氏いるし、もしかして今彼氏いないのって私だけ?? うわ、寂しすぎるんだけどー!」
「いや、私は彼氏とはもう別れたわよ? だから寂しがらなくて大丈夫よ。今なら私も佐倉と同じ独り身仲間なんだからさ」
「え? 香織って彼氏と別れたの? それは知らなかったなぁ……って、いやいや! 私と同じ仲間なんて言っても、どうせ香織は彼氏なんてすぐに作れるじゃん! あーあ、私も香織みたいな超絶美人な女の子に生まれたかったなー。あ、そうだ。そう言えばさ、駅前にカフェ出来たじゃん? 友達に聞いたんだけどさ、あそこのスイーツめっちゃ美味しいらしいよ!」
「えっ、そうなの? うわぁ、それは行ってみたいねー!」
俺は机に頬杖をつきながらボーっとしていると、隣の席でワイワイと雑談で盛り上がってる女子集団の机から消しゴムが床に落ちた事に気が付いた。
でもどうやら隣の席に集まっている女子集団は、机から消しゴムが落ちていった事に誰も気が付いていないようだ。
(ま、気づいてないようなら拾ってあげるとするかな)
俺は純粋な善意の気持ちで床に落ちた消しゴムを拾っていき、その消しゴムを隣の席に座っている女子に手渡そうとして声をかけていった。
「はい、これ。落としたよ」
「……え?」
そういって俺は隣の女子に消しゴムを手渡そうとした。するとさっきまでワイワイと物凄く楽しそうに笑っていた女子の表情が途端に……。
「げっ、根暗キモオタじゃん……」
「え……って、はっ? ね、根暗キモオタ……?」
隣の席に座っていた女子はまるで“気持ち悪い汚物”を見るような冷たい表情になって俺の事を見てきた。しかも“根暗キモオタ”とかいう悪口まで俺に言ってきた。
俺はそんな悪口を言われるなんて思いもしなかったので、面を食らってかなり戸惑ってしまった。
そしてそれからすぐに、隣の席に集まっていた女子達が一斉に俺とその女子の方に顔を向けてきた。
「うん? どうしたの香織ー? そんな奇妙な顔してさ?」
「何でもないわ。隣の根暗キモオタに急に話しかけられただけよ」
「えー? って、うわっ、マジじゃん! あはは、根暗キモオタを見たの久しぶり過ぎるんだけど! 根暗キモオタが学校に来てるとかマジ受けるー!」
「ってか根暗キモオタのクセに香織に話しかけるとかマジであり得なくない? キモオタの分際で香織に声かけてくんじゃねぇよなー」
「あはは、確かにそうだよねー! ってかそもそも香織だけじゃなくて、私達に声かける時点で生意気すぎるっしょ! キモオタの分際でマジでキショすぎー!」
「「「あははっ!」」」
(……い、いや何がキショすぎだよ! 笑ってんじゃねぇよ!)
俺は女子集団から数々の暴言を食らって唖然としてしまったんだけど、でもそれからすぐに正気を取り戻して心の中でそうツッコミを入れていった。
いやまぁでも、隣の女子達に話しかけるのが生意気だと言われる理由は、ほんの少しは理解出来るんだけどさ。
だって俺の隣にいる女子集団はスクールカースト最上位に君臨してる生徒達だからな。隣の席に集まってるのは4人グループの女子達なんだけど全員綺麗だったり可愛かったりしてるギャル女子だった。
しかも俺が今話しかけた
前島さんの見た目は160センチ台で豊満なおっぱ……じゃなくて、非常に魅惑的なスタイルをしている。スカートもかなり短くしているので魅惑的な生足も見えて凄く艶めかしい。
それと髪の毛は明るく綺麗な金髪ロングにしており、顔付きは切れ長な瞳と艶ボクロが特徴的で大人の色気がムンムンの出ているすんごい美人な女子生徒だった。
そんな超絶美人な前島さんや周りにいるスクールカースト最上位の女子達に向かって、スクールカースト底辺である俺が気さくな感じで話しかけていったら、そりゃあ生意気だと言われるのも多少は理解出来るけど……でも根暗キモオタって何だよ!?
「あはは、それでー? 根暗キモオタは香織に話しかけてどうしたのよ? キショいんだからさっさと用件言ってよねー」
「ぐぐっ……え? あ、あぁ、えっと、さっき前島さんの机から消しゴムが落ちたから拾ったんだよ。だからそれを返そうと思ったんだけど……」
「あっそ。用件はそれだけ? それじゃあさっさと机に置いてよ。あとキモいんだからこっち見んじゃねぇよ」
「あ、あぁ、わかったよ……」
俺はそう言って前島さんの机の上に消しゴムを置いていった。前島さん達はもう既に俺の事には興味を無くしたようで、俺の事をガン無視してまた楽しそうに話に戻っていた。
「あ、それで? 今なんの話をしてたんだっけ?」
「あぁ! 今日新しくできたカフェのスイーツを食べに行こうって話だよー! ってことで皆は今日は予定空いてるかな??」
「私は空いてるよー」
「うん、私も空いてるよ。香織はどうかな?」
「あー、ごめん。今日は放課後にバイト入ってるんだ。だから今日は三人で行ってきてよ」
「そっかそっかー。バイトならしょうがないね。うん、わかった。それじゃあクッキーとか日持ちのしそうなお菓子も売ってたらお土産に買ってきてあげるよー!」
「あ、それは嬉しいわ。ふふ、それじゃあ皆の感想話も楽しみにしてるわね」
「うん、楽しみにしててよー! あ、そうだ、そういえば今日の夜にやるドラマのゲストに俳優のさ……」
隣の席に集まっているギャル女子集団は、さっきまで俺に向けていた嘲笑の顔を一切せずに凄く楽しそうにワイワイと話で盛り上がっていっていた。
俺はそんな楽しそうにしてるギャル女子集団をなるべく見ないようにしながら、机に頬杖をついてぼーっと前方を見ていった。
はぁ、それにしても俺ってスクールカースト最上位の女子達から根暗キモオタ野郎だって思われてたんだな。そんな事は13年前の俺は全く知らなかった……。
まぁそりゃあ俺は暗い人間だったし友達もいなかったから、好かれている人間ではないと思ってたけどさ……。
(でもまさかスクールカースト最上位の女子達からそんな悪口を言われる程に嫌われているとは全く思わなかったなぁ……いやでも待てよ??)
その時、俺は嫌な予感がした。スクールカースト最上位のギャル女子集団が俺の事を根暗キモオタ野郎と言ってるだけならまだ良いんだけど……で、でもさ……。
もしかしたら今の悪口ってギャル女子集団だけじゃなくて、クラス全体で浸透している俺への悪口っていう可能性も十分にあり得るよな?
いや、もしそうだったら俺かなりショックなんだけど!?
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