第15話.だらけの天才


 親友と時間を忘れ、ゲーセンでのひとときを楽しみ軽く夕食の調達をして帰宅した奏多。


「ただいまー」

「遅い、お腹すいた」


 ボサボサの髪だらしなく着た部屋着だが、美しいという言葉が相応しい義妹は相も変わらず表情筋がお亡くなりになっているが、ツンとした口調で玄関へノソノソとやってくる。

 どんな感情でも可愛い。

 もはや、我が義妹いもうとは後光が差してるのではないだろうか。


「ごめんごめん。腹減ったよなってか自分で作ろうとは思わないのか」

「作る?私はそんな言葉知らない」

「はいはい分かりましたよお嬢様」


「ん」と両手を広げる義妹。


「どうした」

「リビングまで連れてって」

「お前なぁ……家の中でくらい歩けよ……」


 なんやかんや、おんぶしてリビングまで連れて行ってしまう俺も甘やかしすぎなのだろう。


「いい匂いする」


 すんすんと鼻を揺らし、奏多の持つ袋に狙いを定める美鈴。


「ケーキ食べてきたんじゃないのか?」

「……ご飯は別腹」

「そういうのって普通デザートの時いうのでは?」


 ツッコミながらも袋から取り出したのは、弁当屋のチキン南蛮弁当とハンバーグ弁当。


「どっちがいい?」

「ん、ハンバーグ弁当。でもチキン南蛮も食べたい」


 本当にいつもわがままだなと苦笑しながらも二人で席につき『いただきます』と手を合わせる。


「そういえば、ままから連絡来てた」

「なんだって?」


 奏多は自分が手をつける前に、美鈴にチキン南蛮を一切れ渡す。

 渡すと言っても美鈴が口を開いて待っているので、口に運ぶまでがお仕事だ。


「今週お父さんも少しお休み取れたから、土日こっちに来れるなら温泉に入ろうだって」

「あー、確かに父さんの今いる場所温泉有名だもんな。旅行気分で行きたい気持ちは山々だけど俺はパスだな」


 今週の土日は、なんとあの発情大魔神こと桜花先輩と生徒会として学校行事のボランティアに参加しなければならない。

 ボランティアと言っても地域のごみ拾いなどだが、色々な人とふれあう機会があるため勉強になることも多々ある。


「む、女の影……」

「?」

「じゃあいい私もパスする」

「いや、せっかくだし行ってこいよ駅まで見送ってやるから」


 パクッとハンバーグを小さい口に運び咀嚼しながら、美鈴はふるふると横に首を振る。


「おにい行かないなら行く意味ない」

「おいおいお前そんな言葉を義母マリアさんが聞いたら泣いてしまうぞ」

「むぅ、でも……」

「行ってこいマリアさんと離れ離れなのも寂しいだろ?」


 今も俺にこうして甘えているのは、恐らく実母マリアさんと離れているからこその反動だと思っている。

 少しでもその寂しさを無くせるなら、美鈴はマリアさんと楽しい土日を過ごすべきだ。


「……分かったでもそしたら、土日おに……かにゃたが一人になる」

「俺は大丈夫だよ?心配してくれるのか?本当に美鈴は優しい子だな」


 奏多は、チキン南蛮弁当を食べ終わると立ち上がり美鈴の頭を軽く撫でた後、ゴミを捨てる。


「俺は俺で一人でゆっくり土日を過ごすから」

「……わかった行ってくるでもおにいは駅まで着いてくること」

「はいはい分かったよ」


 美鈴はハムスターの方に頬を膨らませもぐもぐと咀嚼していた。

 どうやらまだ食い終わりそうにない。


「じゃあ俺は風呂入るからな。ちゃんとゴミは捨ててからのんびりするんだぞ」

「もぐもぐもぐ……ふぁい」


 だらけてるからと言って別に部屋も汚いわけではない。

 美鈴は多分自分の中で何か境界線があるのだろう。

 今まで食器を放置していたり飲みかけのペットボトルを溜め込んだりなんてことも無いどちらかというと綺麗好きだ。


「ほんと、ずっと居るけど美鈴は未だに不思議なことが多いな……」


 まぁそんな中でもかくていしていることがひとつ。

 義妹は最強に可愛いということだ。










「さ、シャワー上がってからLMFやるかぁ」


 奏多は、十数分ほどでシャワーを終えドライヤーなども済ませ、ふたたびリビングへ戻るとそこにはうつ伏せでソファの上にだらける義妹の姿。


「おにいおかえり」

「なんだ起きてるのか」

「うん、お腹いっぱいになったら少し眠くなったから……」

「だから横になってたと。なるほどな」


 相変わらずのだらけ具合だ。

 ソファに腰をおろしその様子を伺っていると、うつ伏せのまま顔だけこちらに向けてきただらけの徹底には本当に頭が下がらない。


「お風呂入れて」

「嫌だよ自分で入ってきなさい」

「……ケチ」


 拗ねたのかこちらに向けていた顔を反対側に向け、足をバタバタさせる美鈴。

 今までだらけているとこは散々みてきているが、中でも最大限の意思表示かもしれない。


「そういえば、転校生が来るって話今日和希としてたんだけどさ」

「……ん」

「どうやら、兄妹で転校してくるらしい」

「ん」


 あまり興味が無さそうな声色で返す美鈴。


「ここで驚きなんだけど、なんとその転校生の妹の方に今日本当に偶然ゲーセンで会ったんだよな」

「ん」

「西条マリ……ちゃんだったっけな」

「……」


 普段から美鈴の些細な変化を見逃さない奏多は、転校生の名前を出した途端ピクっと動いた美鈴を見逃さなかった。


「知り合いか?」

「……知らない」

「そうかまぁ何にせよ明日転校してくるらしいって話だ」


 奏多はソファから立ち上がり、冷蔵庫の中から水を取るとLMFをやる為自室へ足を運ぶ。


「あ、風呂もちゃんと入っとくんだぞー」

「ん」


 相も変わらずだらけの極致に居る美鈴に、苦笑しながら奏多はその日ハイムとともに夜中まで遊び、次の日遅刻する事になったのだった。

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