ツ ナ

N

ー 序 ー

第1話 ツナと土蜘蛛

※ この作品は素人による拙い文章の空想創作物語です。また表現も現代風に変えている事をご了承下さい。


 平安時代の中頃(中期) 嵯峨源氏のツナこと渡辺綱(わたなべ の つな)は主である源頼光(みなもと の よりみつ)の命により京都は蓮台野の洞窟を奥へ奥へと進んでいた。

 太い麻紐に油を染み込ませた簡易な松明の灯火を照らし 狭い洞窟を行く。

 天井に被っている折れ烏帽子が擦れて少しズレたのを直す この時代 男子は必ず被り物を被る。 被り物が取れるのは現代だと下着を見られるのと同じ恥辱的な感覚で常に気にかけている。

 平安時代の平均身長は 男子は157cm〜161cm

 女子は140cm〜150cm ツナは約150cmと成人としては小柄で顔立ちもさして印象に残らず平凡だ。 そんな小柄なツナさえも腰を屈めたうえ折れ烏帽子が擦れてしまうぐらい洞窟は低く やっとツナが通れるぐらい狭くなってきている。


「長いな……」


 かなり進んだ 歩を止め汗を拭う そして思い出す この土蜘蛛討伐を命じられた時を……。



 主である頼光邸にはツナはじめ武勇に優れた家臣が集まっていた。

 卜部季武(うらべ すえたけ) 碓井貞光(うすい さだみつ) 坂田金時(さかた きんとき)

 自分を含め世間では頼光と四天王と呼ばれていた 大袈裟だ。

 碓井貞光は自分より1歳年下で背が高く細身だが筋肉質 女性に好まれそうな顔立ちで長さ180cm程の大鎌を携えている。

 卜部季武は3歳年下で160cmと平均身長 筋肉質で眼が細く頭の良さが顔に出ている名参謀。

 坂田金時はとにかくデカイうえ筋肉隆々 背も4人の中では1番高く 携える高さ180cmのマサカリもシックリくる 愛嬌がある童顔な顔立ちだがこれでも卜部季武と同じ歳だ。

 中庭で碓井 坂田と雑談していると主である頼光様と卜部がやって来た。


「みな聞いてくれ 先ほど帝から土蜘蛛討伐の命が下った」 


 朝廷に刃向かう土豪 豪族の輩達のことを 総じて土蜘蛛と呼んでいた。現代だとチーム名 組織名を総じて反社や暴力団と言う事と似ている。


「ひとつは東三条の森を根城にする 猿女を名乗る者をカシラに 鵺一党 もうひとつは蓮台野は神楽岡近辺を根城にする輩 詳細は不明」


「同時に2つですか?」


 頼光様の言葉に感情のない質問をした坂田。

 無表情で卜部が答える。


「そうだ なので二手に別れることにした……頼光様はこの卜部と坂田で鵺一党を ナベさんと碓井で蓮台野ということで 宜しいのでは……」


 何故かみな自分のことを「ナベさん」と呼ぶ。


「イヤ 鵺一党は数も多いと聞く しからば儂と卜部 碓井 坂田 他20名程の配下で向かう 蓮台野はツナ1人で大丈夫 大丈夫!」


 それを聞いた3人は「またか…」という顔をした これは毎度のことで信用されてるのか 買いかぶり過ぎなのか 自分1人で何でも出来ると思われている節がある。

 碓井 坂田には羨ましがられるが 卜部は心底心配してくれる。


「頼光様 蓮台野の情報は少ないです ナベさんの武勇は我ら4人で随1とは言え危のうございます!せめて配下を20人程つけて向かわせて下さい!」


「大丈夫!大丈夫!ツナなら大丈夫!サッ!急ぎ支度を整えよ!」 


 毎度のことなので予測はしていた為 懐には簡易の松明を数本持参していた 日も傾きはじめているので 松明の数が足りるか確認していると 卜部を先頭に碓井 坂田が近寄ってきた。

 困り顔の卜部が心配そうに言う。


「申し訳ないナベさん また苦労かける」


「卜部さん気にしないで いつも通りだよ」


「鵺一党を討伐したら即座に我ら3人馳せ参じる!」


 有り難い言葉だった。

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