第21話 言えない関係

 クリスマスにどこか一緒に行く提案をしてくれた羽山さん。

 どこに行こう。

 私達のリアルで初めてのお出かけ。


 仕事をしながら羽山さんをチラッと見る。

 他の社員と話し込んでいる。

 そのポーカーフェイスと、感情を読み取れない話し方が、二人で話している時と全然違って尊い。

 思わずニヤけてしまう。


 まずい!気を引き締めないと。

 また誰かに勘づかれたら大変だ。


 私はまた仕事モードになって淡々とこなしていた。


 新人の葉月さんは、だいぶ仕事に慣れてほとんどミスもしなくなり、頼もしい。

 昼休みに少し会話をしながら廊下を歩いてた。


「天川さんに聞きたいことがあるんです」


 可愛らしい顔で言う。


「どうしたの?」

「あの……羽山さんと付き合ってるんですか?」

「え!?」


 隠しているのに、なんでバレるの??


「え?付き合ってなんかないよ。どうしてそう思うの?」


 葉月さんは少し恥ずかしそうにしている。


「私、実は羽山さんのことが好きで、よく見ちゃうんです。それで気づいたんですけど、天川さんと話す時の羽山さんは少し違う気がするんです」


 え──


 葉月さん、羽山さんが好きなのか……。

 羽山さん、あの人を寄せ付けないオーラを放ってなければ、相当モテそうなタイプではある。


 仕事してる時はいつもと変わらずお互い接してたつもりだった。

 でも、話す距離感が、だんだんと無意識に近づいてしまっているのかもしれない。


 色々複雑な心境だ。


「ちょっと最初は怖かったんですけど、最近少し優しくなって、いいなって思ってて」


 羽山さんは確かに最近、あのオーラも少し和らいで、親しみやすさはアップした気がする。

 他の人もそれを感じているのかな。


「付き合ってないって聞いて安心しました。突然すみませんでした!」


 葉月さんはぺこっとお辞儀をして、エレベーターに乗って行ってしまった。


 言えたなら──


 羽山さんと付き合ってるって。

 でも、この関係を守りたいから、やっぱり言えない。


 その時、遠くに羽山さんが見えた。

 目があってしまった。

 私は無意識に目を逸らしてしまった。

 そのまま避けるように別の方向に歩いた。


「なんで逃げるんだよ」


 いつの間にか追いつかれて驚いた。


「逃げてないですよ……?」


 羽山さんの顔を見ると、また感情が爆発してしまいそう。

 私は必死にこらえた。


「クリスマスの事、また連絡する」


 羽山さんが私の横を通り過ぎようとした時、私の頭にポンと触れた。

 私は幸せで胸がいっぱいになって、また一人で悶えていた。


 クリスマスの事ってなんだろう。


 気になる!!

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