1.3 共同研究の開始

アカリは、クリップボードを大山に差し出した。




「しばらく、私の**『研究記録』を集めるために、大山と『行動を共にしたい』の。これは『対価』**よ」




大山はクリップボードを受け取った。中には、まるで論文のような形式で、大山の**『行動パターン』や『発言の傾向』が詳細に記録されていた。「大山との接触時間延長による、アカリの『寂しさ係数』の変動」**とまで書かれている。




(なんだ、この子は…本当にいろいろ大変なんだろうな)




職を失い、自分の存在価値を見失いかけていた大山は、ふと、この子の**「役立つ人になりたい」**というひたむきな夢に、わずかな光を見た気がした。




「わかったよ。おじさん、今は**『無重力空間』**にいる身だからね。君の『研究協力』に付き合ってやろう」




「感謝するわ。ただし、『時間の規則性』は『社会的契約』の基本よ。私は18時には、**『自分の基地』に『帰還』**しなければならないものなの」




アカリは満足げに頷くと、リュックから青い金属の塊を取り出した。




「これが、最初の発明品よ。『アンシン丸』。最初の**『被験者』**は、貴方に決めたわ」




大山は、青い金属の塊を手に握りしめ、心の中で決意した。




(クビになった俺には、もう「人の笑顔を作る」という大きな夢はない。だが、まずはこの子の夢を叶える。発明品を困ってる人に使ってもらうことから始めようか)




大山の足取りは、先ほどより、ほんの5グラムだけ軽くなっていた。

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