第21話「未来への祝福」

 穏やかな日々が続くある日、リオネルは原因不明の体調不良に悩まされていた。抑制剤を長年服用していたせいか、彼の体はまだオメガの性に完全に順応しておらず、不調はすぐに治まるだろうと、リオネルは特に気にしていなかった。


 しかし、その体調不良は、アシュレイにとっては尋常ではない事態だった。彼は国中から優秀な医師を集め、リオネルの診察をさせた。


 そして、医師から告げられた知らせに、リオネルは驚きで固まった。


「リオネル様…お身体に、新たな命が宿っておられます」


「え…?」


 リオネルの懐妊。その知らせに、アシュレイは子供のように大喜びした。冷徹なアシュレイが見せた満面の笑みは、リオネルを心から驚かせた。


「リオネル…!本当か…!」


 アシュレイはリオネルを力強く抱きしめた。


「感謝する。俺の愛しい番」


 王子の番となったリオネルの懐妊は、国中を駆け巡り、人々は未来の王とその番、そして新しい世継ぎの誕生を心から祝福した。


(まさか転生して悪役令息になった俺が、こんなに幸福な未来を迎えるなんて)


 リオネルは、破滅の運命に怯えながらも、真実の自分を隠し続けた。しかし、アシュレイは、その秘密を知りながらも、ありのままの自分を受け入れてくれた。


 自分は悪役令息なんかじゃない。ただ、アシュレイの番なのだ。


 愛する人の腕の中で、リオネルはこれまで感じたことのない、世界一の幸福を噛みしめるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る