第19話「初めての夜」
その夜、アシュレイとリオネルは初めて、番として結ばれることになった。
部屋には、アシュレイが用意したアロマの香りが満ちていた。それは、アルファのフェロモンが暴走しないよう、アシュレイ自身が選んだ鎮静作用のあるハーブの香りだった。
「リオネル。…恐れることはない。俺は、お前のすべてを愛している」
アシュレイは、優しくリオネルを抱き寄せた。冷徹な王子が、愛しい番だけに見せる、熱く、甘い眼差し。
彼はリオネルの耳元でささやいた。
「番として、お前との契りを交わしたい。それは、お前を誰にも渡さないという、俺の誓いだ」
オメガバースにおける『番の契り』は、アルファがオメガの項(うなじ)に噛みつき、魂と体を深く結びつける神聖な儀式だ。それは、アルファならではの独占欲と、オメガの受容が合わさる、至福の瞬間でもあった。
リオネルは、その幸福に全身が震えるのを感じた。
「…お願いします、アシュレイ様」
アシュレイは、リオネルの首筋に顔を埋め、彼の肌の温かさを感じた。そして、リオネルの最も敏感な場所に、そっと牙を立てた。
「あっ…!」
微かな痛みの後、リオネルの体内に、アシュレイのアルファフェロモンが深く、濃密に注ぎ込まれていくのを感じた。彼の身体は、心地よい快感と安らぎに包まれ、アシュレイの番であることを受け入れた。
アシュレイの独占欲と愛情が、リオネルの身体と心に深く刻み込まれていく。自分が悪役令息ではなく、ただ一人の人間として、深く愛されていることを実感し、リオネルはこれ以上ないほどの幸福感に包まれた。
真実の愛を知った二人の夜は、永遠にも思えるほど長く、そして甘く続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。