第19話「初めての夜」

 その夜、アシュレイとリオネルは初めて、番として結ばれることになった。


 部屋には、アシュレイが用意したアロマの香りが満ちていた。それは、アルファのフェロモンが暴走しないよう、アシュレイ自身が選んだ鎮静作用のあるハーブの香りだった。


「リオネル。…恐れることはない。俺は、お前のすべてを愛している」


 アシュレイは、優しくリオネルを抱き寄せた。冷徹な王子が、愛しい番だけに見せる、熱く、甘い眼差し。


 彼はリオネルの耳元でささやいた。


「番として、お前との契りを交わしたい。それは、お前を誰にも渡さないという、俺の誓いだ」


 オメガバースにおける『番の契り』は、アルファがオメガの項(うなじ)に噛みつき、魂と体を深く結びつける神聖な儀式だ。それは、アルファならではの独占欲と、オメガの受容が合わさる、至福の瞬間でもあった。


 リオネルは、その幸福に全身が震えるのを感じた。


「…お願いします、アシュレイ様」


 アシュレイは、リオネルの首筋に顔を埋め、彼の肌の温かさを感じた。そして、リオネルの最も敏感な場所に、そっと牙を立てた。


「あっ…!」


 微かな痛みの後、リオネルの体内に、アシュレイのアルファフェロモンが深く、濃密に注ぎ込まれていくのを感じた。彼の身体は、心地よい快感と安らぎに包まれ、アシュレイの番であることを受け入れた。


 アシュレイの独占欲と愛情が、リオネルの身体と心に深く刻み込まれていく。自分が悪役令息ではなく、ただ一人の人間として、深く愛されていることを実感し、リオネルはこれ以上ないほどの幸福感に包まれた。


 真実の愛を知った二人の夜は、永遠にも思えるほど長く、そして甘く続いた。

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