第15話 打ち上げ

 プレゼンを終えて、帰社して、常務に籠原部長と報告に出向く。

「お、お疲れ様。どうだった。」

「感触は、よかったと思います。他社の内容にもよりますけれど。」

「そうだな。今日は、チームは上がっていいぞ。ねぎらってやれ。」

「ありがとうございます。」

 戻ると、チームの若手から声がかかる。

「籠原部長、麻生課長、プレゼンの打ち上げ予約しました。参加はいかがですか。」

「俺たちが出なきゃ、始まらないだろう。スポンサーがな。」

 部長が笑顔で私に振り向いたので、

「ええ。そのとおりよ。」

「じゃあ。18時駅前のダイニングミモザにお願いします。」

 月斗にLIMEする。

『プレゼン無事終わったよ。打ち上げがあるので遅くなってもいい?』

『お疲れ様でした。楽しんできて。』


「お疲れ様~。」「お疲れさまでした~。」

 プレゼンを終えての解放感とチームが今日で一旦解散する感傷もあって、飲み会は盛り上がった。苦労話、失敗談、いろいろな話がでる。

「さすが部長、お見それしました!」

「例のずれの個所を指摘されたとき、正直あせりましたけれど、見事な切り返しでしたね。」

「そう、そう。向こうのリーダーの方も納得してましたもんね。さすが部長です。」

「おい、おい。そんなに持ち上げるなよ。俺だってドキドキだったんだぞ。なあ。」

 籠原部長が、笑顔で答えながら、私の肩を抱いた。

 一瞬ドキッとした

「ええ?全くそんな感じしませんでしたよ。」

「そうかぁ~。」

 嫌な感じはしなかった。


「もう一軒どうだ。反省会やらないか。」

「はい。お供します。」

 飲み会が終わり、解散となった時、部長から声をかけられた時、断る選択肢はなかった。シックなバーに入った。

「でも、部長の言ったとおりでしたね。夫は正直に言った方がいいっていったけれど、あのズレを指摘された時の切り返しに、向こうも関心していました。」

「プレゼンは駆け引きだ。下手にでりゃあいいってもんじゃない。言っちゃ悪いけれど、旦那さんは係長だろ。俺とはキャリアが違うよ。」

 本当なら、夫を下げられて嫌な気分がするところだけれど、いつも正論ぽく意見を言う月斗の意見を部長が否定してくれて、少しだけ胸がすく思いがした。

(偉そうに言っても、現場はきれいごとでは、生きていけないのよ。)

 

 お酒も入って調子にのった私は、

「部長、私の次長への推薦のことですけど・・・。」

 打算に満ちた言葉を口に出した。

「ああ。そのことか。」

 籠原部長は、席を立って隣に移った。さっきと同じように私の肩を抱いた。

「今回の受注が、うまくいったら、君を推薦してもいい。ただ、次長というからには、俺の片腕になる、相棒になるってことだけど、その覚悟は、あるのかな?」

 部長は、不敵な笑みを浮かべた。

「あ、相棒ですか・・・・。」

「そう。それがなければ、君は推せないかな。」

 部長の言葉の意味を、私は理解した。

「あ、あります。」

 私の声は震えていた。

「じゃあ、決まりだな。麻生課長」

 私は、部長に肩を抱かれて店を出て、ホテル街に向かって歩いた。


 その夜、私は部長に抱かれた。更にオフィスでさらに輝くために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る