第13話 娘の異変

 籠原部長の言ったとおり、役員が確認する模擬プレゼンは、無事に終わった。

「うん。いいんじゃないか。」

「これでいこう。」

 少しだけ心が軽くなったが、本番への緊張感は高まる。本番まであと数日に迫った。


 朝、中1の理奈の調子が悪くなった。

「おなかが痛い。」

「頭が痛い。」

 いろいろと理由をつけて学校をちょくちょく休むようになった。もともと口数がすくない理奈。

「具合が悪かったらしょうがないけど、学校には行きなさいよ。」

 それしか、彼女にかける言葉が思いつかなかった。私には時間がなかった。

「じゃあ。治ったら学校行くのよ。」

 そう言って、出社しようとした。

「無理させない方がいいよ。何かあるのかもしれない。」

「休み癖がついたら困るでしょ。」

 そう言って家を出た。今、大変な時期なの、お願いだから学校へ行って。


 帰宅すると、理奈の姿はリビングになかった。月斗に

「理奈、学校行ったの?」

「いや、休ませた。俺も会社を休んだ。」

「仕事大丈夫なの?」

「仕事より、理奈の方が大切だろう。」

「そうだけど・・・。」

(休まない私に当てつけで言ってる?すぐ休める係長はいいわね。私が理奈を大切にしてないって言いたいわけ?)

 心の中で、毒を吐いた。プレゼン直前の娘の不調に私は心のバランスを失っていた。娘たちの部屋へ行く。

「あ、ママ。おかえり。」

 明るい華奈の声が迎えてくれる。ほっとする。

「理奈、どう?明日は行けそう?あんまり休むと勉強も遅れるよ。」

「そうそう。私もさっきそう言ってたところ。」

「うん。そうしたい。」

 理奈は、小さい声で答えた。

 リビングに戻って月斗に声をかけた。

「理奈、明日は行くって。」

「そんなに簡単なものじゃないと思う。夜は、そう言うんだ。自分でも行けそうって。でも、朝はそうじゃないことが多い。」

「そんなこと言わないでよ。行けるかもしれないじゃない。」

(わたしが、理奈のこと何にも知らないって言いたいわけ?)

「学校に行けなくなったらおしまいよ。」

 私の仕事にだって影響がでるし、肩身もせまい。

「学校に行くことより、理奈の心の健康の方が大事だよ。僕たちが、焦らないようにしないか。」

「分かってる。」

 不満を隠すように席を立ってキッチンに入った。


 翌朝、やっぱり理奈は、学校には行けなかった。月斗は、会社に休む電話をしていた。プレゼン直前の私は、休めない。

「あなた、ごめんなさい。」

「いいさ。大事なプレゼン前なんだろう。親が子に寄り添うのは当たり前だ。」

 プレゼンが終われば、私にも余裕が出る、そこまでの我慢。そしたら、私も、良い母に戻れる。理奈、待ってて。


 



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