第2話 会話

「課長、三恵商事のプロジェクター納品の件なんですけど。」

「書類見せて。」

 うん、納入価格、受注を受けた製品で間違いない。

「オッケー、じゃあ佐藤君、発注しておいて。」

「じゃあ。お疲れ~。」

「お疲れ様で~す。」

 やばい、遅くなっちゃった。脱兎のごとく駅の階段を駆け上がり、電車に飛び乗る。

「ただいまぁ。ごめ~ん。遅くなった。」

 リビングのドアをバンと開けると、月斗と華奈が向かい合って座っていた。

「パパは、私が湘南台受けるの反対なの?」

「そうは言っていないよ。夕日丘の方が、華奈がのびのびやれるかな、と思って。」

「どうしたのぉ?」

 2人の話に入る。

「パパが、私が湘南台受けたいって言ったら、夕日丘の方がいいって。」

「夕日丘って、パパとママの母校よ。いい学校よ~。横浜夕日丘。でも、湘南台を受けたいの?」

 湘南台は、県立ナンバー1の進学校だ。のびのびとした雰囲気、行事や部活動も盛んで誰もが行きたくなる学校。ただ、県内のトップクラスの生徒が集まるから、簡単に入れる学校ではない。

「湘南台に入るには、相当、成績上げないと無理よ。テニス部どうするの?」

華奈は、テニス部キャプテン。県大会、関東大会まで狙っているはず。

「もちろん続ける、文武両道がわが家のモットーでしょ。」

華奈なら、やれるかもしれない。ポジティブになんでもやれる子だ。

「じゃあ、湘南台の受験、応援しようかな。」

「さっすがママ。分かってる~。」

「パパはどう思うの?」

「華奈が、十分に力を出せる学校がいいと思う。夕日丘が向いていると思う。」

「どうして?」

「君も分かるだろう。部活動も勉強も面倒見がいい。きちんとサポートしてくれる。それで僕たちは、スポーツも勉強もやり遂げられた。」

「それは、そうねぇ。でも、湘南台もそうじゃない?あんなに行事や部活も盛んなだから。」

「そうそう。ママの言うとおり!娘の希望を尊重してよ。パパの意見はもう聞いたから、結論、もう決まった!」

「そうね。」

 私は、ペンを出して、志望校に湘南台と書いた。チラッと月斗を見る。

 月斗は、また、あの表情をしていた。

 私が、意見を押し通した時に見た。結婚式場も、新婚旅行先も、この家のデザインも、私が決めてきた。


 月斗の考えは、深く深く考えて導きだされたものだ。それでも、私は自分の感情を優先して意見を押し通そうとした。その時、月斗が考えを譲ってくれる時の表情。

 

 その表情は、月斗の優しさと愛情だと信じていた。

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