第11話 初の野球観戦生配信③
「まぁ、このシチュエーションと打順考えたらほぼ間違いなくバントですよねー」
打席に入ったのが、長打があまり期待できない八番バッターだっただけに、私はそう言った。
コメント
:ゲッツ―怖いもんね
:ここで一点取らないとしんどいよなさすがに
:堅実に行きたい
わたしと視聴者の意見がそろったところで、打席の中でバッターがバットを寝かせた。
そのまま初球できっちり送りバントを決めてワンアウト二塁。
一打先制のチャンスだ。
9番バッターの打順だが、監督がベンチから出てきた。
どうやら代打が送られるようだ。
「今日のベンチで代打で出てこれそうな選手って誰ですかね」
私が呟いたその瞬間。
『代打、玉木。背番号99』
スタジアムDJの声が聞こえてきた。
「玉ちゃんきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
コメント
:wwwwwww
:そっか、この人玉木の大ファンだったわ
:急にでかい声聞こえてきてびっくりした
:切り抜き確定で草
私の喜び方に対して、今日一番の盛り上がりを見せるコメント欄。
「ここで打ったらヒーロー確定ですよ!いったれ玉ちゃんっ!」
私の声にも当然熱が入る。
しかし、
「相手ピッチャー変わりますね。出てくるのが吉田投手……右投げですね。はい終わり解散解散ー」
コメント
:???
:どしたん?
:急にテンション下がったなw
:気持ちはわかる
私のテンションの落差に戸惑う視聴者の方と、同意してくれる視聴者の方。
私はその理由を早口で捲し立てた。
「知らない方のために説明すると今シーズンの玉ちゃんは右投手をすごく苦手にしてるんですよね。対左投手に対して打率3割4分1厘、出塁率も3割9分3厘という成績を残しているんですが、対右投手には打率2割3厘、出塁率も2割3分1厘しかないんですよね。OPSみても対左投手が0.7以上あるのに対して対右投手は0.4程度と長打も打ててないんですよね。三振率も対右の時はすごく高くなってしまっていて、それは外の逃げる変化球を追いかけて三振することが多いからなんですけど……」
そこまで言ってハッとしてコメント欄を見る。
コメント
:???
:あかねちゃんストップストップ!
:早口すぎて草
:オタク特有の早口で草
コメント欄には私の言葉についていけていない視聴者が続出していた。
「あわわわわ、すみません。夢中になってしゃべりすぎちゃいました……ごめんなさい、気を付けます」
私はこの配信を始める際に決めたことがある。
それは『視聴者みんなが楽しめる配信を作る』ということだ。
この配信には野球が好きで見てくれている視聴者もいれば野球に詳しくない私のファンもいる。
その両方に楽しんでもらえる配信を作ろうと決めていたのだ。
それにもかかわらず周りが見えなくなってしまっていたことに情けなさを感じていたのだが、
コメント
:やっぱりこの子ガチファンなんだな
:あかねちゃんが楽しそうに話してるの聞くの楽しいからだいじょうぶだよー!
:まさか推しの口からOPSっていう単語を聞くとは
:マジの野球オタクだってわかって逆に好感持てる
視聴者の方々は温かい言葉で励ましてくれた。
改めて自分は視聴者の方々に支えらていることを認識しながら。
「そう言っていただいてありがたいです!玉ちゃんが打てるように、しっかり応援していきましょう!」
私は声援を送るのであった。
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