第2話 特訓
数日後、結が医務室で目を覚ます。体の痛みは残るが、意識ははっきりしている。玲奈も回復傾向にあり、医師の確認が済んだ後、七海が二人を呼び出した。
「よし、体調もある程度戻ったし、特訓だ」
結はまだ少しふらつきながらも頷く。
「はい……わかりました」
玲奈は元気よく手を振った。
「先輩!絶対に先輩に負けませんよ!」
結は微笑みながら杖を握り、魔力を集中する。
「わかった。じゃあ、まずは基礎動作からね」
二人は東北管区本部の訓練場に向かい、基本の魔力制御と反応速度の訓練を始める。玲奈は前回よりも格段に力強く、正確に魔法を扱う。結はそれを見て小さく感心した。
「うん、成長してるね……玲奈」
「えへへ、先輩に褒められると嬉しいです!」
結も自分の杖を構え、魔力の精度を確認しながら攻撃と防御の練習を始める。玲奈との連携を意識して、攻撃を出すタイミングや距離感を調整する。
「玲奈、次は私が先に仕掛ける。防御体制を取って」
「はいっ!」
結の魔力が波のように広がり、玲奈の周囲を包む。玲奈は魔力を操作して防御結界を形成し、結の攻撃を受け流す。次第に二人の動きは息ぴったりになり、互いの魔力が干渉し合いながら訓練は続いた。
30分ほど経ち、二人は息を切らしながらも互いに笑い合う。
「ふぅ……やっぱり連携って難しいね」
「でも、すごく楽しいです!先輩とだからやれるんですよ!」
結は杖を下ろし、肩で息をしながら微笑む。
「ありがとう、玲奈。私も楽しいよ」
七海が遠くから見守りながら声をかける。
「二人とも、いい調子だ。この調子で次の段階に進もう」
結と玲奈は互いに頷き、再び集中して魔力訓練を続けた。夕方になるころには、以前より格段に互いの魔力を読み合えるようになり、バディとしての信頼感も深まったのを感じていた。
夕暮れ時、訓練場は赤く染まり、魔力の残像がかすかに揺れている。七海が中央に立ち、訓練の説明を始めた。
「さて、ここからは応用訓練。互いの魔力を読み合い、戦術を組み立てる実戦想定だ」
結は杖を握り、玲奈を見やる。
「準備はいい?」
「はい!先輩、全力で行きます!」
最初の訓練は、二人が分かれて敵役の魔力の“擬似攻撃”を回避するものだった。結は玲奈の動きを読んで攻撃を仕掛けるが、玲奈は前よりも格段に素早く魔力結界を作り、結の攻撃をかわす。
「さすがですね……!」
「玲奈、まだ余裕ありそうだね。次はこっちからしかけるよ!」
結が魔力を変化させ、攻撃の形を変えると、玲奈も瞬時に反応して防御パターンを切り替える。二人の魔力がぶつかり合い、訓練場の空気が振動する。
次の訓練は、互いに協力して“擬似敵”を制圧するもの。二つの魔力を同期させ、効率よく攻撃を当てるのが目的だ。
「玲奈、私が左から仕掛ける。右は任せる」
「了解です!先輩、行きます!」
結の攻撃を受けた擬似敵の動きを玲奈が封じる。息を合わせることで、二人の攻撃は連続して命中する。
「いい感じ!もう一回!」
「はいっ!」
訓練を繰り返すうちに、二人の連携はほとんど無意識でできるレベルになっていった。結は少し汗を拭いながら微笑む。
「玲奈、ここまで上達するとは思わなかったよ」
「えへへ、先輩のおかげです!私、もっと強くなります!」
七海が遠くから見守り、声をかける。
「二人とも、集中力も魔力コントロールも格段に上がった。この調子で次は実戦形式の模擬戦だ」
模擬戦では、訓練場全体を使い、二人に擬似敵が複数出現する想定。結と玲奈は互いに魔力を補完し合い、敵の動きに合わせて戦術を即興で組み立てる。
「玲奈、左の敵は私が食い止める。君は右の敵を封じる」
「わかりました!先輩、任せて!」
実戦形式の訓練では、玲奈が結の動きを予測して先回りして攻撃を封じる場面もあり、結もその動きを信頼して攻撃を集中させる。
訓練終了後、二人は息を切らしながらも笑顔で向かい合った。
「ふぅ……これで少しは本番でも使えるかな」
「はい!先輩、私、もっと強くなります!」
結は玲奈の成長を実感し、心の中で微笑んだ。
「うん、これなら大丈夫。玲奈となら、どんな敵でも立ち向かえる」
夕焼けの光が二人を包み、訓練場には達成感と絆の温かさが広がった。
次回に続く....
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