かくれんぼ かいきHELL

第1話 かいきHELL:1


 それはきっと、無い物ねだりだった。


 彼が泣いている理由が、わからなかった。


 彼が笑っている理由が、わからなかった。


 誰もが皆違うのだと言っておきながら、大きく逸れた人間に対しては異常だと言う。


 個性と異常の違いは何なのか。


 誰もその答えを教えてはくれなかった。



 静かにしていれば怒られないのだと教えてもらった。


 別に、怒られることが嫌だとかそんな風には思わなかったけれど。


 それでも確かに怒られている時間は面倒臭かった。


 

 お前の笑う声が嫌だと言われた。


 お互い様だろうと呆れたが、面倒臭かったから言わなかった。



 そう、俺は面倒臭かったのだ。



 だから、理解されることを諦めた。


 無駄だと思った。




 生きることもやめようと思った。


 無駄だと思った。



 それでも生きているのは何故なのだろうか。


 その答えを、誰か教えてくれるのだろうか。


 教えてくれるわけはない。


 だってここは、ただの生き地獄なのだから。


 俺の声は、きっと誰にも届きやしない――。

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