『Deicide-Village』
詩羅リン
0.冷たい歓迎
感情が失われた世界を、それでも救う。
たとえ、神に抗う運命だとしても。
たとえ、自分を犠牲にしたとしても。
この《神喰い》の力で、必ずーー。
■
俺の名前は
…………なんて、よくある嘘だ。
どこにでもいそうで、どこにも居場所がないやつ。実際は不登校で、右腕はいくつか線が刻まれている。
理由は自分でも分からない。痛いのに落ち着く。そんな矛盾だけが残っていた。
今は、近所の神社でクールダウン中。気まぐれで、賽銭を投げようとしていた。
基本的に五円だったりするけど、金の使い道のない俺は例外。五百円玉を放り込む。
「……楽できる世界に行けますようにー」
軽くパンパンと手を叩いて、諦め半分に目を閉じた。もういいだろうと目を開けようとする頃、
鈴の音が、風に溶けて消えたーー。
次の瞬間、鳥の声も、街のざわめきも、呼吸の音さえも消えた。世界が、音という概念を忘れたように。
突然の違和感に目を開けると、そこには無表情の人間たち。冷たい金属の先端が、俺の額に突きつけられていた。
場所が変わった訳ではあるまいし、突然現れた機械的なそいつらに恐怖を感じて、俺は自然と手を上げることしかできない。
刹那、心臓が逃げ場を失ったように、
一拍遅れて動き、暴れる。そして、
灰色の世界が、俺を冷たく歓迎したーー。
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