三つの存在編
第21話(おやじさんの夢―三体のゆくえ―)
――純粋な悪は、純粋な善から生まれる。
おやじさんは剛田の一件を受けて、霊脈史を紐解いた。霊脈史には英雄達の活躍が数多く記されていた。
「英雄……皆、殉職しているな」
おやじさんは霊脈協会の構造的な問題が昨日今日、始まったものではなくキリスト復活と同時に発足した時から存在していたことを見出した。
「生きている者は殉職してゆく、
生き残った者はただそれを見送るしかない。
無力だ。だがテクノロジーの進化を経て、
我々にできることはあるはずだ。
剛田が地獄を消し飛ばしてくれた今なら」
おやじさんは今までガーズが使用する破魔道具の制作や修理に追われていた。そのため分厚く、何冊もある霊脈史を読み込む時間はなかったのだ。しかしガーズの着任が以前より大幅に減ったため、新しい道具の制作に取り掛かることができた。
「翔、皮肉なものだな。お前のおかげで今がある」
アーキテクチャについてはおやじさんしか理解できないものだった、概要はこうだ。
――霊脈が天国と地獄の均衡の歪みを察知すると霊脈伝いに破魔道具がそれを吸収する。破魔道具の中で圧縮し、霊力をぶつけ灰にしてゆく。これによってガーズが着任する頻度を下げ、殉職の確率を下げる目論見があった。
その破魔道具は「バッファー・コンプレッサー」と名付けられた。その装置はうまく機能していた。使用する霊力はあらかじめ霊玉に蓄積したものを使うことで霊脈士の日常生活を穏やかに円滑にしていった。さらにおやじさんは稼働の信頼性を上げるため複数台のバッファー・コンプレッサーを並列接続した。これなら霊脈の接続を切らずに連続運転が可能になるからだ。
ここに落とし穴があった。いつもそうなのだ、新しいことに挑戦すると必ず遅れて起こる嫌なこと。避けることができない因果のようなものだろう。バッファー・コンプレッサーは車のエンジンのような構造を持っている。装置下部に取り付けられた潤滑油を受け止める皿があり、その部分は「歪み」に直接触れてしまうのだ。歪みにあてられた油に滓のようなものが出来てゆく。そこが盲点だった。
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