第6話 賞金稼ぎ
俺がとぼとぼと街を歩いていると、その視線の先に赤く輝く光点が目に飛び込んできた。
あった。交番だ。昔と同じ場所にどうやらあるようだ。
正直助かった。もしもなかったら、探す気力が出たかどうかわからないくらいに打ちのめされているところだ。
俺はひとまず、現世で生きていく術を手に入れなければならない。
あるかどうかもわからない職業だが、四十年も経っていれば変わっているかもしれないと、
頼む。あってくれ、懸賞金制度。そしていてくれ、賞金首。
俺は祈るような気持ちで交番にたどり着くなり、脇に立てかけられた掲示板を見た。
うつむいた状態から、ゆっくりと顔を上げて見る。
すると思わず目を見張る文字が飛び込んできた。
懸賞金800万円!
あった!あったぞ!昔はなかったはずだけど、今は犯罪者に懸賞金が掛けられている!
よっしゃあ!あるじゃねえか懸賞金!
お、報奨金ってのもあるな。300万か。これは情報提供代ってことだな。どちらにしても大金だ!これなら充分生活できるはずだ!
いや、ちょっと待てよ。そういえば物価っていう概念があったな。もしかしてこの800万って、今だと全然大したことなかったりして。いや、逆に超大金の可能性もあるか。
だがそれをどうやって調べればいいのか。
そうだ。コンビニで商品を見ればいいじゃないか。そうすれば大体の物価がわかるだろう。
よし、善は急げで引き返せ。
俺は急に元気が
そしてたどり着くなり、数多くの商品を片っ端から見比べてみた。
その結果、出した結論。
昔に比べて様々な商品はだいぶ値上がりしていると思うけど、800万円あれば数年は充分な生活ができそうな感じ……ってところかな。
正直見慣れぬ商品もたくさんあるし、十五歳当時の物価もはっきりとは覚えていない。
だがそれでも、この感覚は大きくは違っていないんじゃないかと思う。
よし、決まりだ。
俺は急いでまた交番に戻り、再び掲示板を目を皿のようにして見た。
とりあえずこの中のひとりをとっ捕まえてやろう。まずは一番懸賞金が高い奴にしよう。
懸賞金800万円。
殺害現場は俺にとって都合のいいことに、同じ県にある別の市だった。
これなら歩いて行ける……途中に五つほど別の市を挟むから、もちろんそれなりの時間はかかるが、背に腹は代えられない。俺は来栖の顔を脳内に焼き付けようとじっと凝視した。
よし、完璧に覚えた。
なら早速行こう。たぶん六時間くらい歩けば着くはずだ。
六時間……そう、六時間くらい歩けば……はあ~、げんなりする。
でも行くしかない。他に生きていく術が思いつかない限り、行くしかないんだ。
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