第4話 ユーイ・オークス中佐
前線基地のテントに入った瞬間、空気がぴりっと変わった。机の向こうには、淡い金髪を後ろで束ねた中佐、ユーイ・オークスが待っていた。鋭い目つきだけど、どこか疲れてる。
「まずは、私の部下であるニュートを助けてくれたことに礼を言わなければ。ありがとう」
「さっそく本題に入るが、鉄の馬車に、魔力反応ゼロの破壊兵器……きみたちが“異界の来訪者”とみて間違いないか?」
千隼が肩をすくめる。
「あー……まぁ、はい。気づいたら戦場にいました」
ユーイは眉をひそめながら、俺の後ろに目を向ける。依月は微妙に俺の腕にくっつきながら言った。
「私たち、敵じゃない……あんまり疑われると、ちょっとムカつく」
ユーイはその様子を見て、なぜか少しだけ声を和らげた。
「……なるほど。あのゴブリンの群れを制圧してくれたことにも感謝せねばな、前線全体が助かった」
「いえ、M2のおかげですよ」
「その“エムツー”という兵器……魔法なしであの威力。解析させてもらえると助かるが…」
「ねぇ…あれ渡したら、絶対ロクなことに使わないよ。私、なんか嫌な予感する」
「誤解しないでほしい。我々はアルビオンとベルジェンを守るために力が必要なんだ。きみたちの技術は、戦況を変えうる」
俺は俯き少し考え、顔を上げる
「……条件付きなら、協力してもいい」
そう口に出した瞬間、ユーイの目が細くなった。
気に入られたのか、警戒されたのか……たぶん両方だ。
「ほう条件か、聞こう」
俺はゆっくり指を立てた。
喉の奥が乾いてるのに、声だけは妙に落ち着いて出てくる。
「1つ目、俺の技術を勝手に量産しないこと。使う時は、必ず俺の許可を取ってほしい」
ユーイの表情がかすかに動いた。思ったより控えめな条件だったと思われたかもしれない。でも、本当の狙いはそこじゃない。
「基地に拘束されて何でも命令通り、というは無理だ。状況によっては自分で判断して動く。それが飲めないなら、協力できない」
俺は顔に出さないようにして、視線を前に戻す。
ユーイは静かに頷いた。
「3つ目、これが一番の条件。依月の安全を最優先にしてほしい。万が一、依月になにかあったらこの協力はなしにする。」
言い切った瞬間、自分で言っておきながら胸が熱くなった。依月の袖をつかむ力がすこし強くなった気がした。ユーイの細められた目が開かれ、俺たちにこう告げた。
「わかった。その条件を飲もう。君たちの身の安全を保障する。しかし戦場にいる間は身の保証はできない。それでいいね?」
俺は静かに頷く。依月は黙ったままだが俺の袖をしっかりと握っていた。
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