第5話sideA [下準備、ミシェル]

 日本での祖母の葬儀から11年、私は一流セレブ、ロッソ家の娘として社交界にもある程度慣れて来た。経済と会計、ファッションの勉強に力を入れ、いずれロッソグループの力になりたいと常に自分を磨いている。


 そりゃあまぁ私も年頃の女子華の17歳なので流行のファッションやコスメ、恋バナにも人並みに興味はある。


「え?ミシェルまたフッたの?」


「だってアイツらロッソ家家柄にしか興味無いンだもの、こっちから願い下げだわ」


「ええ?イケメンだし家柄も悪くないじゃん」


 確かに彼等は見た目も家柄も悪くはない、でも、この私瑞穂をナンパして良いのは世界にただ1人だけだ。


「じゃあさ、ミシェルの求める条件って何なの?」


「そう言えば聞いた事無いわね、良い機会だから知りたいわ」


「まず年上の日本人」


 ミシェルの条件に、友達は「まずスタートラインから違う」とミシェルをナンパしにきた男子連中を憐れんだ。


「日本人ってそんなに良いの?」


「日本人がって訳じゃ無いけど、私の好きな人がたまたま年上の日本人なのよ」


「へぇ〜、相手はミシェルの事知ってるの?」


「知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないかも」


「なんかハッキリしないわね」


 友達に私が過去世を知ってるとは言えず、裕くんの事はハッキリさせないまま誤魔化す事にした。


「じゃあ私はバイトに行くわ」


「セレブのお嬢様がアルバイトってシュールよね」


「そうかな?お金を稼ぐ大切さは身をもって知るべきだと思うよ。コレはお爺さまの受け売りだけどね」


 実はバイト代を稼ぐには理由があった、日本に行った時に興信所探偵に頼んで裕くんの所在を確かめたかった、少なくとも生きているのが分かればそれでいい。


 でも、本当は裕くんに逢いたい。逢ってこの想いを伝えたい、裕くんは可愛くて優しくてモテるから多分他の女の人と結婚して幸せになってるかも知れない、それでもいい、ただ逢いたい。

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