清らかすぎる聖女様を堕落させました!~隣に引っ越してきた清楚な聖女様が恋に落ちて堕天するだけのお話~

万和彁了

第1話 お隣に聖女様が引っ越してきた

「おっぱい大きくてエッチでりんごの好きな女の子と付き合いたい」


 そう言いながらみのるはリンゴを妙に冷たい音で齧った。こんなことを言っているからとても顔が良いのにこいつはモテないんだ。


「おっぱいとかエッチとか言ってないで、もっと相手のことを真剣に見つめる気とかないのかよ?」


「えー。おっぱいおっきいの夢じゃん。付き合ったらエッチするんだから、最初からエッチ好きな人がいいしょ。正人だっておっぱいおっきい子とちっぱい子と同時に告白されたらどうするよ?ん?」


「その時は好きな方と付き合うよ。誠実に考えなきゃ。せっかく好意を寄せられるんだから、あいてのことをちゃんと考えないと」


「ふーん。まあ。お前はそういう奴だよね!あーおっぱい大きい子が転校してこないかなー」


 実は結局煩悩から離れられなかった。俺は肩を竦めて屋上から教室に戻った。そしたらである。


「転校生を紹介する。神崎汐音さんだ。二年からだけどみんな仲良くするんだぞ」


 担任の隣に女の子がいた。赤みがかった亜麻色の長い髪の毛と、緑色の瞳のとても綺麗な子だった。美貌に反して楚々とした優しそうな印象。ぺこりと品よくお辞儀をした。それだけでクラスがざわつく。


「はい!はい!すげぇー可愛いね!彼氏に立候補しまーす!!」


 鼻息荒く実が立ち上がり大きく手を挙げた。目がキラキラしてる。


「すみません。男性とお付き合いすることを想像もしたことないので。ごめんなさい」


 速攻フラれた。実は天井を仰ぐ。クラスから失笑を買っている。


「あのバカは放っておいていいぞ。神崎さん。空いている席についてください」


「はい。わかりました」


 そして開いていた席に神崎さんは座った。姿勢が良くやっぱり品がある。だけど俺のような陰キャとは縁がないだろう。高嶺の華は遠くから見ているのがいいのだ。















 休み時間になると神崎さんはすぐにみんなに囲まれた。


「その髪と目の色綺麗だね。ハーフ?」


「祖母がチェルケスの出でした」


「チェルケス……?どこの国?」


「チェルケス人の独立国家はありません。祖母はコーカサスから来たそうです。でもあまり故郷のことは話したがりませんでした」


「そうなんだー」


 チェルケスというのは聞いたことがない。あほだが物知りな実るな知っているだろうか?


「実。チェルケスって?」


「コーカサスの民族だな。歴史は複雑で一言じゃ言えないね。オスマン帝国の後宮に女を沢山いれたことで知られる美貌の民族としてよく知られてる」


「コーカサスってどこ?」


「黒海とカスピ海に挟まれた山岳地帯」


 さっぱりぴんと来なかった。だけど美貌の民族と言われると、確かにそうだろう。神崎さんには並外れた美貌があった。髪の色目の色、白い肌に掘り深く目の大きい顔立ち。神秘的に見える。


「でもあんまり他人をルーツで見るのはどうかと思うぞ」


 実がどこか真剣にそう言った。普段おちゃらけているくせに真摯に聞こえる。


「でも美人な理由がわかったじゃないか。それにちゃんとその人のことを知るって大事だろ」


「女の子の過去なんてどうでもよくない?おっぱいデカくてエッチだったらいいじゃん」


 そこは譲らないのか。実の女性観はある意味まっすぐらしい。この能天気さが羨ましいと思った。










 放課後もいろんな部活から神崎さんは誘われた。だけど丁重に断っていた。


「すみません。なにに熱中していいか、よくわからないので、ご迷惑はかけられません」


 断り方が丁寧だったから、逆恨みされることもなかった。みんな彼女に好印象を持っていた。気がついたらみんなから陰で「聖女様」と呼ばれるようになっていた。緑化委員会で花を優しく愛でていたり、誰にでも優しく振舞う姿が誰にの目にも印象的だったからだ。神秘的な美貌と誰隔てない優しい態度と清純な雰囲気からみんなが自然に慕ったのだ。


「エッチな方の性女様になって欲しいなぁ」


「神崎さんはいい子だろ。そういう目を向けるのやめろよ」


「でも神崎さん、おっぱいでかいじゃん」


「そういうのどうかと思う」


「清純すぎて触らせてくれないのはマイナスだね」


 実は神崎さんにおっぱい以外期待していないらしい。エッチな子よりも、付き合うなら清楚な子の方がいいんじゃないだろうか?まあ煩悩に塗れてる奴がおかしいだけか。








 俺は両親が外国に出張に行ってしまったために一人で暮らしている。さすがに高校生にもなって外国に行くのは憚られたので、学校の近くのアパートに住まわせてもらっている。仕送りは十分だ。仕事でいぞがしかった両親の御陰か料理の腕は自分で言うのもなんだがいい方だ。だけど今日も一人で飯を食う。それは少し寂しかった。たまに実が食いに来るのがある種楽しみになっているあたり自分の陰キャっぷりが少し嫌になるときもある。ご飯を食べ終わった。アニメやゲームでもしようかなと思った頃だ。ピンポーンと呼び鈴が鳴った。こんな時間に誰だ?実るくらいしか思い当たる節がない。俺はインターホンに出ずに、直接ドアを開けた。


「実か?……って?え?神崎さん?」


「え?高原君ですか?」


 お互いにドアの前で茫然としてしまう。どうして神崎さんがここにいるのか?ショートしてしまった俺の頭より先に神崎さんが口を動かした。


「すみません。私、隣に住んでます」


 よく見れば神崎さんはTシャツに短パンのラフな姿だった。髪の毛を後ろで束ねている。


「え?そうだったの?」


「昨日の昼頃に越してきました」


「それは、まあ気づかないか」


「そうですね。なんかおかしいですね」


 神崎さんはクスリと笑った。とても可愛らしい笑みだった。学校とは違ったどこか隙のあるような感じがとてもチャーミングだった。


「隣へのあいさつなのかな?」


「いいえ。そうじゃなくて。お恥ずかしいんですけど……ベランダに入れさせてもらえますか?」


 どこかもじもじと頬を赤く染めて神崎さんは言った。


「なんで?」


「その。……下着を取り込む時に……そっちへ落としちゃいました……」


 神崎さんの下着?一瞬想像してしまう。白い肌なら黒いのが映えると思う。


「だからその取らせてもらっていいですか?」


「あ、ああ!はい!どうぞ!」


「すみません。失礼します」


 美人で清楚な転校生がお隣に越してきた。これはなんてエロゲなんだろう?俺はその事実に心臓が高鳴って仕方がなかった。

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