第31話 ー 特訓初日


ドルードの罵声が容赦なく叩きつけられる。


足首を刈られ、視界が揺れる。


「重心を意識しろ馬鹿者が!!」


「カハッ!?」


ドルードによって崩された重心を立て直す前に追撃が入り、拳が鳩尾を跳ね上げる。


その時、隙を突くようにエリナの片手直剣、その切先が脇腹を裂くように伸びた。


「えっ」


しかし、ドルードはそれを肘と膝で白羽取りして、残った右足が地面を蹴り上げる。


蹴り上がった右足は勢いをそのままに、エリナを蹴り飛ばした。


「きゃっ!?」


「隙を突く時こそ油断するなっ!!」


土煙。


俺とエリナは同時に片膝をつく。


膝が笑っている。


それでも脚に力を通し、立ち上がった。


「良い度胸だフジタカ、ここで倒れるようなら、その場で斬るところだった。」


「ま……まだまだ!!」


喉が焼けるほど叫ぶ。目の前の巨岩みたいな男に、気圧されないために。


以後、短い号令と衝撃の連続だった。


「踵に乗るな、土踏まずで受けろ」


「視線を落とすな。剣先は目で追うな、肩で読む」


「一歩がでかい。半歩で殺せ」


踏み替えるたび、脛に火花が走る。


受けるたび、腕が痺れる。


エリナの息も荒い。


けれど、彼女の刃は次第にまっすぐになっていった。


俺も、転ばなくなっていった。


——ドルード鬼教官、爆誕。



「……はぁ、はぁ……」


「も、無理……」


鍛錬場に二人の荒い呼吸だけが響く。


背中に汗が張り付いて、砂が皮膚に痛い。


ドルードは木剣を肩に担ぎ、区切るように言った。


「今日はここまでだ」


それだけ。


けれど、その声は妙に優しかった。


俺は膝に手をつき、空を仰ぐ。


肺が熱い。


けれど、どこか心地いい。


(まだ、行ける。ここからだ)


エリナが小さく笑った。


「……明日、もっとやれるよね」


「当たり前だ」


俺たちは無言で頷き、立ち上がった。


明日の地獄に、少しだけ期待しながら。



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