第15話 ー 夜明け


森が白み始めた。


黒い影が淡くほどけ、鳥の声が朝の訪れを知らせる。


夜通し狩り続けた俺のレベルは、22まで上がっていた。


《17Lv → 22Lv》


身体能力の大きな向上、五感が鋭くなって世界が広がったように感じる。


「……ステータス、表示。」


光の板が目の前に浮かぶ。


数字が淡く揺れ、静かに俺の成長を告げていた。



名前: フジタカ(藤高)

年齢: 15歳(中身35歳)

職業: 駆け出しハンター

レベル: 22


HP: 340  (※熊の突進を受けても立てる。骨は折れる)

MP: 94 (※「火よ灯れ」で焚火を起こせる程度)

筋力: 148 (※成体のオークを槍の一撃で貫通できる)

敏捷: 123 (※走るオークを後方から追い抜ける)

知力: 612 (※行動予測が高い精度で可能)

精神: 571 (※ 狂気・恐怖・罪悪を同時に受けても心拍が一切乱れない)


スキル:

・【虫踏み】 小型生物を確実に踏み潰す。成功時に微量経験値。


・【経験値嗅覚】 「これ殺したら上がるな」という直感が働く。


・【サラリーマン根性】 どんな苦行でも“残業”だと思えば続けられる。


・【数値確認】 ステータスを見てニヤける。実際の強さは微妙。


・【自己正当化】 罪悪感をロジカルに処理するスキル。超安定。


状態異常:

・精神負荷(微)

・快楽反応(鈍化)



――知力と精神の高さは言うまでもないが、やはり一番嬉しいのは筋力の伸びだ。


急所を外しても、槍の一撃でオークを大ダメージに持ち込める。


運が良ければ一撃で仕留められる。


「力が、漲るな……。」


これまでにない冴えを帯びた槍の薙ぎが、空気を断った。



森が静かだった。


夜の名残がまだ枝の影に滞り、風のない空気が皮膚に張りつく。


焚火の残り香が湿気と混ざり、血の匂いだけが生々しく漂っていた。


俺は、静まり返った鬼の巣へと戻ってきた。


掘立て小屋の戸を押すと、内側の空気がゆっくりと漏れ出す。


女と子供たちが隅に身を寄せ、怯えた瞳でこちらを見上げた。


小さな肩が震える音が聞こえる。


恐怖の色は、人間と変わらなかった。


俺は何も言わなかった。


言葉を挟む必要などない。


槍を構える。


突く、引く、また突く。


動作は正確で、無駄がない。


板に響く声と音が、ただ機械のように部屋の中を反響する。


「……駆除だ。」


口の中でその言葉を転がす。


狩人としての義務、そして人々の安全の為。


貼り付けた理由があるだけで、本人はそこに大きな意味を見出してはいない。


余計な事は考えず、やる事をやれば良い。


だが、ほんの一瞬――心が何かを訴えた。


鬼の瞳に映った怯えの感情、その子供の「なぜ」という顔。


それは問いでも、罰でもない。


ただ、俺の中の何かが微かにきしんだ。


(なぜ、何も感じない?)


思考が浮かび上がり、すぐに沈む。


問いの形をした泡が、理屈で押し潰されていく。


「これは正しい」「必要なことだ」「これでいい」


言葉を積み重ね、倫理を鎮める。


「……まあ、いいか。」


それが結論だった。


投げ捨てるように呟くと、胸の中の違和感は音もなく消えた。


残ったのは疲労と、空洞のような静けさだけ。



外へ出る。


朝日が差し込み、血の跡が光に照らされる。


やけに眩しく、目が痛む。


肩に疲れの重さがのしかかる。


息を吐くと、夜の熱が冷えた。


それでも足は止まらない。


経験値は多く、レベルは数段上がった。


「帰って、寝よう……。」


呟きながら歩き出す。


鳥の声が戻る。森が再び息を吹き返す。

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