向日葵の世界より、バースデイ‼

砂漠ありけり

プロローグ

 私は引きこもりだった。

 些細なことで引きこもってしまって、そのことにあまえて現実から逃げていた。

 寝て。食べて。ゴロゴロして。寝る。

 そんな変わらない日々を繰り返していた。


 この生活が嫌になることはなかった。

 だって、同じような日々を繰り返していれば一日が過ぎ去るのなんてあっという間だし、好きなことをしていれば現実を忘れられて嫌なことを考えなくてもいいから。


 だけど……ふとした瞬間に襲い掛かって来る。考えないようにしていた現実が襲い掛かる。


 【私は引きこもって何をしているのだろうか。私は一生このままでいいのだろうか。一生この部屋に引きこもっているのか 。親が死んだら?お金は?仕事はどうするの?誰が私みたいな人間を雇ってくれるのか。なんで私は“普通”の子じゃないの。なんで周りと同じようになれないの】


 引きこもってしまった理由なんてたいしたことなかったはずだ。

 そんなことに悩み続けないで、普通の人生を送れたはずだ。

 なのに、引きこもってしまった理由を都合よく扱って、現実から目を背け続けて、惰性な生活が心地良くて……。


 このままじゃ駄目なことぐらい自分が一番よく解っていた。他人から諭らされなくたって解っていた。

 将来のこと。

 周りとの差。

 ここまま生きていけるのか。

 絶望感。焦燥感。不安に恐怖。迫りくる現実。

 グチャグチャになるまで考えて、時には自分や物に八つ当たりして、それでも動けなくて。泣いて。喚いて。

 考えれば考えるほど自分がみじめで情けなくて、生きていていいような人間じゃないって思って。

 

 私が弱いことなんて解っていたよ。私が駄目な人間って解っていたよ。


 言い訳ばかりで今更かもしれない。もう手遅れかもしれない。

 

 それでも――変わっていきたい。それでも――もう一度ちゃんと生きてみたい。


 十八歳の春。私は自分の部屋を出て、再び外の世界へと飛び出していった。

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