第10話 私と女神で『追放系』を実現する

「私たちは、単に魔族を退治すれば良い訳ではない」と私。 

「フムフム」と女神が相槌を打つ。


「いいか、私たちの目的はPVを上げることだ」

「そうせんと天界に帰れんからな」と女神も同意する。


「そこでだ、まずどういう作品にPVが集まるかを研究する」

「ほお」

「それにはラノベのテンプレートを使うのが簡単と見た」

「確かに」

「すでに『俺TUEEE』とか『ざまぁ系』とかを借用した」


「わしもラノベの本で少しは勉強したぞ。『追放系』とかどうじゃ」

「それは難しいな」

「どうしてじゃ」と女神は不思議そうに聞く。


「私たちは、私と女神、二人しかいない」

「一人を追放すると、残りは一人。どちらが追放した側で、どちらが追放された側か判らん」と私。


「だから、あと2~3人メンバーを増やしてからでないと、『追放系』は難しいという訳だ」と私は続けた。

「なるほど」と女神は感心した。


「ところで前から気になっておったんじゃが、聞いていいか」と女神。

「なんだ?」


「お主はなんで、1人称が『俺』じゃなくて『私』なんだ」

「それは……」


 それには理由があった。『俺』を使って目立ってしまうと、この話の主人公が『俺』になって厄災が降りかかって来そうだからだ。第3者的で目立たない『私』を使っているのだ。


 だが女神には言えない。


「それは『私』が上品な生まれだからだ」と誤魔化した。


「なるほど」と女神は納得した。ちょろい。

「それでは『スローライフ系』はどうじゃ」


「話のテンポが遅いし、盛り上げるのが難しいぞ。PVが爆上がりしないと帰れない事を忘れるな」と私は釘を刺す。


「お主、スローライフ系だと畑や村の描写が苦手だからじゃないのか?」

「そんな事はないぞ」

「『冒険者ギルド』と書けば詳細な書き込みは不要だが、『畑』とか『村』だけだと読者に伝わらないので、書き込みが必要なるからのぉ」

「うるさい。風景描写は勉強中だ」


「もう、王道で『追放系』を実現じゃ」と女神。

「どんな風に?」と私。


「まず、わしが冒険者ギルドに行って、冒険者のチームに入れてもらう。そして、わしのチート能力で、王国一の冒険者のチームにのし上がる」

「それは凄い」と私。


「もちろんチームリーダーはわしじゃ。そして王国を乗っ取って王女になる。最後に、お主を国外へ追放する。これで『追放系』の完成だ」と女神が胸を張る。


「ええ!?」と私は驚いた。


 ちょっと待てよ…… と私は気づいた。

「おい、女神。妄想の途中ですまん」

「なんじゃ?」


「お前、いまPV爆上げするまで天界から異世界に転生中だな」

「それが何じゃ」と女神。


「つまり、何もせんでも、今お前は天界から追放中だ。だから、この作品自体が、すでに『追放系』なんだ」と私は指摘する。


「だから、PV爆上げして天界に帰れば、話は完結する」と私。

「なるほど」と女神は深く頷いた。

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