第3話 女神に願った俺「が」TUEEEが何だかちがう

 女神は1年前のユーザーからクレームが来ていることに気がついた。

「やれやれ、もうすぐ1年の保証期間が切れるところだったのに、滑り込みじゃな」


 俺は真っ白でピカピカした空間に戻っていた。目の前に白く輝く女神さまが面倒くさそうな顔で立っていた。


「俺がTUEEEに決まってるだろ! 『運がTUEEE』って詐欺じゃないか」俺は苦情をまくしたてる。


「分かった、分かった。運を強くするのは発生パラメータの値を調整するだけだから、副作用が少なくて簡単なんじゃよ」と女神が弁解する。


「どうでも良いから、俺『が』TUEEEに変えてくれ」


「そなたの願い叶えてしんぜよう。俺『が』TUEEEな世界に転生じゃ」女神は両手を天に向けて掲げた。


 俺は異世界へ勢いよく飛ばされた。

 

 手を振り回したり、ジャンプしてみるが、大して力が強くなった訳ではなかった。


「あれ、俺、本当にTUEEEなの?」と不安になった。


 試しに拳で道端の木を、おもいっきり殴ってみた。


  ズボッ


 木は腐ってはいなかったが、手ごたえなく手が埋もれた。 


 俺は舞い降りた森から出て、冒険者ギルドへ向かう。


 俺は古い木製のドアを押し開けた。

 そこに居るのは筋骨隆々とした男たち。


「お前。そんなヒョロっとした体で冒険者になるつもりか?」と一番大きな躯体の男が絡んできた。


「そうだよ」と俺。

「は? 何言ってだこいつ?」と男は笑う。


「なんだ、なんだ、よそ者か」と男達が寄ってきた。


 最初の男が逞しい左腕を伸ばすと俺の胸を掴んだ。

「ちょっと世間を教えてやるぜ」と右腕を振り上げた。


 俺は軽く男を押す。男は吹き飛ばされて壁にめり込んだ。


 俺には何の変化も無かった。

 

 周りが弱くなって、俺「が」TUEEE になっただけだった。


 それから1年、女神から授かった「周りが異常に弱い世界」で

さまざまな敵を屈服させた。


「けっ、けっ、けっ、勇者よ。よくぞ四天王の我が城にたどり着いた」と魔族が威嚇する。


「問答無用」

 俺は小石を拾うと、魔族に向かって軽く投げた。


 石は猛スピードに加速すると、魔族を穿ち、その居城を吹き飛ばした。


「これじゃ、俺じゃなくてもいいだろ」


 俺は天を仰いで言う。


「女神さんよ。俺の希望したのは、俺『を』TUEEEにして欲しかったんだ。何とかしてくれよ」

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